教科書・参考書のまとめ

解剖学、発生学、組織学の学習に役立つ教科書・参考書をまとめた。また、その他の基礎医学の教科書や、それらの学習の参考になりそうなテキストもとりあげた。個々の本のレビュー記事のまとめはこちら

目次

COI開示このレビューの筆者およびその関係者は、ここで紹介された書籍の一部に関して執筆者・監修者・訳者・監訳者としての対価を受けています。

まず読む

★★★★★ 医学部の勉強は、大学受験までの勉強とは違うし、他学部とも違う。それを最初に思い知るのが、解剖学だ。授業が始まる前に本書を読んでおくと、悩みが減る。版元絶版で再版予定なしなのが残念。

おすすめセット

まず、教科書、アトラス、実習書を3点セットで揃えよう。実習書は指定だが、他は自分に合ったのを選ぼう。

  • 教科書:人体の成り立ちが形を軸に説明される。
    • 通しで勉強するための本:授業期間内に通読して学べるかを自分の状況に合わせて選ぶ。詳しすぎると大変。反対に簡単すぎて項目の羅列になっている本だと、理屈がつかめず大変。各自何か1冊。
    • わからないときに調べるための本:授業で出てきた項目が上で選んだ本に載ってないときに、細部まで詳しく書かれた本の当たりを付けておく。図書館で使えばよい。
  • アトラス:解剖図(イラストまたは写真)だけの本。形を学ぶのに図は大切。教科書にも図はあるが、実習のいろいろな場面まではカバーしていない。図だけの本が手元にあると役立つ。
  • 実習書:解剖学実習の手順が書かれた本。複雑に折り重なってできている人体を切り分けるので、手順のガイドがないと解剖できない。本によって手順に差違があるので、指定されたのを各自1冊。履修者のモチベーションを保たせるために、作業の意味づけてくれるような説明も少しはある。けれども、理屈的なこと(筆記試験で問われるようなこと)を身に付けるには教科書も併読。(解剖手順が後に役立つわけではないので、試験にはでない。)

実習書(指定)

教科書とアトラス

電子書籍も合わせて活用したいなら

本学先輩たちのファーストチョイス

意識高めなら

実地試験対策に、写真のアトラスを

画像解剖や発生学の教科書も忘れずに

ピンチになったら

解剖学の教科書

解剖学の履修には、厚い専門書を解読し自分の血肉にする能力の養成も含まれる。親切な教員のプリントでなんとかなるなんて、甘い

★★★★★ よく練られた文章。CGで描かれた図は、立体的ながら形態がよく整理されすがすがしい。的確に設計されたレイアウト。まず読み通すのが早道。日本語版と英語版の両方の電子書籍が付属

★★★★★ 他の解剖学の教科書と比べて小さくて軽い。記述は簡潔で必要十分。図も分かりやすい。

★★★★★ 詳しい解剖学の教科書。臨床事項が沢山ある。文章で記述した項目一つ一つに図があるくらい、図が沢山ある。

★★★★★ マンガとエッチなゴロ合わせが楽しい。臨床上の重要点がわかり、事情通になれる。第9版でカラーになった。他にアトラス必須。

★★★☆☆ 60年以上続く系統解剖学教科書。初版から使われてきた原図がレタッチ・彩色され、臨床関連事項が付け加わった。形態学としては十分で簡潔な記述。日本人の変異についても言及されていて、信頼がおける。現代的ではない。

一人ひとりの顔つきに違いがあるように、実際に解剖をしていると、解剖体の形は教科書ぴったりにはなっていないことに気づく。それを科学的に根拠づけた本。図書館で参照しよう。

★★★★☆ 解剖と生理が一緒になっている。記載の方法が系統ごとなので、解剖学実習の予習には使いにくいか。時間や気持ちに余裕があって解剖学・組織学・生理学を包括して勉強したいとか、教養課程のうちに予習したいとかに。

★★★☆☆ 『イラスト解剖学』よりコンパクト。試験前にピンチなら。

★★★☆☆
文章から学ぶのが得意なひとに。詳細な解説とそれを助ける概念図。神経解剖学を含む。クラシックな臨床事項が内容に深みを増すが、画像診断など実際の医療への関心は皆無で(背側を上向きに図が描かれている、気管支B6の分岐や内側半月の動きが変など)、世界観が閉じている。立体的理解には他にアトラスは必須

解剖学のアトラス

実習の予習や実習中の参考に、アトラスは必須。イラストのと写真のとがあるが一長一短

★★★★★ 多数の写真によるアトラス。標本はいずれも執拗なまでに解剖されている。CTやMRIと解剖写真とを相関できるようレイアウトされている。第9版では章立てが『グラント解剖学実習』に揃えられた。実習室での参照にオススメ。構造の名称を番号で参照させるスタイル。

★★★★★ 図は『グレイ解剖学』より詳しく描き込まれている。プロメテウスより少し模式的。CTや勉強に使える素材も。電子版が付属している。

★★★★★ ネッター氏ほかのイラストを元に編集したもの。臨床上の着眼点を元に描かれたイラストが多く、ためになる。一方で全体を通しての論理性に欠ける面はある。皮下組織を残した図が解剖途中の様子をイメージさせる。電子書籍付きで、iPadで読める。別冊「学習の手引き」セット版もある。

★★★★★ 初代の木炭画のレタッチから最近のCGの図まで、いろいろなタッチのイラストがある。正確で有用な図が多く、構成が論理的。

★★★★★ CGで描き下ろされたイラストは、いずれも精緻で美しく立体感があり、見て理解しやすい。順を追って解剖が進んでいくなど、論理的にイラストが計画されている。ドイツの出版社なので、英米のグレイなどとは用語に少し差異がある

★★★★☆ 写真によるアトラス。写真の各々にスケッチが付され、用語などのラベルがスケッチに施されている。アトラスとしては説明文が豊富

★★★★★ 見開きで図と説明が完結していて使いやすい。図はペン画だが、素晴らしい画力で立体感や質感も感じられる。コンパクト。国際解剖学用語準拠だが、英語圏の教科書とは細部で異なる。文化圏の違いなので気にしないこと

★★★★☆ 写実的でスッキリ整った彩色ペン画が素晴らしい。図の解説が豊富で、教科書くらいの情報量がある。構成は系統解剖学。発生学、組織学、神経解剖学も含むが、原著の出版年(2009年)なりに古い情報があるので注意したい

★★★★★ 精緻なイラストと詳しい説明文。美しい解剖図を眺めながら解説を読んで学べる。3巻組のボリュームと価格に躊躇しないなら、座右に

解剖学実習書

実習書は指定のものを。手順が本によって異なるので。

★★★★☆
日本語版を2013年度から指定。世界で最も多く使われている。実習の目標が章ごとに明示され迷子になりにくい。作業説明は簡潔で明快だが、懇切丁寧ではないので教科書やアトラスでの予習は欠かせない。的確な図。ただし足らないので他にアトラスで補完しないと。

★★☆☆☆ 実習室に班の数だけ所蔵あり。2012年度までの指定実習書(脳の解剖の部分のみ使用予定)。記述が整理されておらず、読みにくい。模式図がわかりにくい。臨床事項あるが古く、有害でさえあるものも

★☆☆☆☆ 骨のことしか書かれていなくて、細かな用語を同定するだけの実習に終わってしまう。形態の意義を、他の臓器や組織と関連づけて考えるには不向き。普通の解剖学の教科書の骨の部分を使ったほうが効果的

『解剖実習の手びき』を今風にした実習書。手順が『手びき』に準じているので、カリキュラムを変えずに実習書を変更できるのが教員側のメリット。作業がステップごとに整理され、随所にカラー図版がある。

CTの参考書

CT、MRI、放射線医学の参考書。医療画像では人体をいろいろな向きや断面でみるので3次元的な見方に馴れないといけない。実データをみて身に付ける他ないが、ガイドブックがないと独りよがりに。CT課題の準備にも必要

★★★★★ 正常画像の解剖をストイックに同定している。解剖の基本が模式図で示されており役に立つ。肺区域が葉間裂に合っていなかったり、表紙にはエコーもあるが実際には腹部の4ページだけだったり、ラフエッジは残っているかも

★★★★★ CT、MRI、X線、アンジオ、エコー。いろいろなモダリティでの疾患のみどころが簡単にわかる。CBT、国試対策に

★★★★★ 画像解剖学、画像診断学の自己学習に。初期研修までには読みたい

臨床医学から解剖学へ

★★★★☆ CBTや医師国家試験にも頻出する代表的な病態を解剖学の視点から説明する。解剖学を学ぶ意義がわかる

★★★☆☆ 解剖学で学ぶ内容を臨床的視点で整理し実用的パースペクティブを得るのによい。しかし、間違いが散見されるのが難。原著は改訂され改善されている

★★★★★ 消化器外科の術式書。発生過程を逆転するように、膜をほぐして臓器を外す。筆者の医師自身による明解なイラストが語る。腸管の回転や鼡径管の構造の図は、発生学や解剖学の教科書に勝る

問題集

試験対策と問題集。CBTや国試には解剖学などの基礎医学からも出題される

これらは、USMLE対策の問題集

発生学

★★★★★ 発生生物学の成果を盛り込んだ人体発生学の教科書。記述発生学と発生生物学がうまく整理されて、分量も多すぎない。電子版付き。日本語版もあるが、版が古いのでオススメしない。

★★★★★ コンパクトなテキストだが、図の大部分に京都コレクション(ヒト発生標本の世界的なコレクション)からの素材が使われており、類をみない

★★★★★ よく使われてきた発生学の教科書。美しい模式図が特徴。形態学的記述と臨床との関わりに重きが置かれる。発生生物学は少しだけ。電子版付き。

★★★★★ 発生生物学では定評のある教科書。この分野の記述はともすれば遺伝子名の海にのまれそうなところ、明解に整理され、読みやすい

★★★★☆ 古典的な記載生物学を軸に、臨床との関わりと現代的な発生生物学がコラムとして付け加わっている。情報量が多く、すこし読みにくい。原著は改訂され、発生生物学が増量し、電子版付き。

★★★☆☆ 描き下ろしのイラストとコンパクトな解説。授業やCBTに堪える最小のテキスト

★★★☆☆ 形態学に特化した発生学のコンパクトなテキスト。ちょっとした確認にも。臨床関連事項もあったらCBTに役立つのだが。

★★☆☆☆ 『ムーア人体発生学』とともによく使われてきた発生学の教科書。分子発生学も記載されているが、説明がわかりにくく、図に間違いが目立つ。Symbryo(人体発生のアニメーション)へのアクセス権付き

組織学

★★★★★ よくアップデートされた内容。整っていて理解しやすい図。タイトな文章。関連する病理学も言及されている。模式図がわかりやすい。

★★★★☆ よくアップデートされた内容。教科書とアトラスがこれ1冊で済む。写真が多い。

★★★★☆ 理解を助ける模式図がおおい。Rossに比べれば写真は多くないが、的確。日本語版が原著の改訂に遅れず随時でている

★★★★☆ コンパクトで、説明がわかりやすい。模式図が主で、顕微鏡写真は少ない。

神経解剖学

臨床に即して学べる神経解剖学。診療の役に立たない詳細は省略されている。

★★★★★ 筆者は神経内医。症例を検討しながら、神経解剖学を楽しんで学べる

★★★★☆ 神経所見をとれるのに必要十分。

★★★★☆ 形態だけに偏らず、その機能的な意味付け、臨床上の着眼点が、立体的で豊富な図とともに記載されている

★★★☆☆ 脳・脊髄の剖出標本・スライス・切片の写真、3D画像、模式図、MRI、Angioが多数。学部生にはOverkillかもしれないが、専門家なら有用だろう

★★★☆☆ 前版と邦訳の出版社が異なる。図が描き直され、前版に比較してわかりやすさが改善された。立体的なイメージがつかみにくく、文章に難解なところがあるのは、もとと同様。(前版の評:★☆☆☆☆ 写真が載っているのはいいとしても、図に的確なのが少ない。脳室、辺縁系のイメージがつかみにくいなど解剖の教科書としては弱い。通読するにも記述が不足、記述もわかりにくい(2011年度履修生S;評価時3年))

クラシックス

古くからあり、いまも改定が継続されている教科書。Gray’s Anatomyの初版は1858年刊。Netter氏のイラストが出版され始めたのは1930年代。

グレイ解剖学のメインストリーム

プロ用に編集したネッター

ゾボッタのアトラス

読み物

★★★★★ 米国の医学部での解剖実習のルポルタージュ

★★★★★ 『グレイ解剖学』の最初の著者達の人生を少ない資料から読み解く。『グレイ』は麻酔の発明によって外科が急発展していたころに書かれた。『外科の夜明け』と合わせて読みたい

★★★★★★ 近代外科学が麻酔法と消毒法の発明によって生まれた経緯のドキュメンタリー。前2者は抄訳だが、意図は十分に伝わる。いずれも絶版。3つ目は完訳で、おどろおどろしいディテールまでわかる。直訳調で読みにくい。

★★★★★ 同名ブログの書籍化

★★★☆☆ 東大の医学科6年生が、後輩に解剖へのモチベーションを持ってほしいと書いた。解剖学を学ぶことに疑問を感じたら。臀部筋注の話が旧いのは多分筆者の使った『解剖実習の手びき』のせい

★★★★★ 米国のPhDを題材にした4コママンガの書籍化・映画化。MD-PhDコースを決める前にPhDとはどんなものかみておこう

★★★★★ 脊椎動物の比較解剖からその成り立ちを深く理解する。原著はとうに絶版で日本でだけ売られている。米国では教養課程でよく使われていたが、継承者が途絶えたか

その他の基礎医学

★★★★☆ 簡潔明解な文章と豊富な図版で一つのテーマごとに見開き2ページで説明され、学びやすい。医学科向けに、病態の理解につながるようなテーマも選ばれている。

★★★★★ 『細胞の分子生物学』からエッセンスを。エッセンス過ぎてかえって分かりにくいところがあるが、そのときは『細胞の分子生物学』を読めばよい。

★★★★★ 神経解剖の勉強でわからなくなったときには神経科学の専門書を

医学英語

英語を母国語とする人にも、医学英語は外国語を学ぶようなものらしい。

医学英語の教科書。米国では医学用語の授業があり、そこで広く使われている。医学用語の成り立ちからはじまり、実際の医学を美しい英語で説明していて、医学全般の教科書のようでもある。本文を読み、練習問題に書き込みながら学ぶ。独習には多少分量が多いか。簡略版、ポケット版もある

マンガでわかる

★★★★★ イラストと手書き文字で、臨床手技が機微までわかる。『平成医療手技図譜』という同人誌のシリーズのうちから市販化されたもの

★★★★★ おもしろい。身近な話題から生化学に入り生態学まで行く。授業の足しになるかどうかは知らないが。英訳されAmazon.comでもよく売れている

★★★★★ これは本当によく分かる。他の教科書を読む前に

悩んだら読んでみる

試験に出るポイントをいわない授業はダメだ、とかいってるやつ、アホか、これでも読め

ドラッカーの『マネジメント』も含めて、大学のVIPたちに読んでほしい

学生にも教員にも、すぐ正解を求めようとするクセついてる人がいて、世界をややこしくしている。そもそも何が問題なのかをよく考えるのが先

わかりやすく説明する心がけ

手短かに説明する心がけ

自分の字を他人が読めないなら、医者になる前に直そう

著書・翻訳

機能形態学の教員による著書・翻訳

解剖学・発生学(インテグレーテッドシリーズ3)

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トートラ解剖学

リープマン神経解剖学 第3版

機能を中心とした図説組織学

ジュンケイラ組織学 第2版

トートラ人体解剖生理学

医学書院医学大辞典

染色・バイオイメージング実験ハンドブック―細胞や組織の形態・遺伝子・タンパク質を観るための染色法と顕微鏡観察のすべて (実験医学別冊)

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