ハリソン物語 – かくして「ハリソン」はグローバル・スタンダードになった

内科学書の国際的なスタンダード『Harrison’s Principles of Internal Medicine』の歴代の編者・関係者が各版の出版までの経緯を回想をまとめた小冊子(非売品)。『ハリソン』の累計販売数が100万部を記録したのを記念して出版された『Harrison’s PRINCIPLES OF INTERNAL MEDICINE 1950-1987』の全訳である。

ハリソン内科学 第5版

ハリソン内科学 第5版

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コンテンツ自体は、メディカル・サイエンス・インターナショナル(MEDSi)社の『ハリソン内科学』のページで公開されている。このページで希望すると、冊子をおくってもらえる。また、医書.jpで電子版の無料お試し版をダウンロードできる。試用期間は10000時間(約417日)。

『ハリソン内科学』は1950年来、2022年の第21版まで続く内科学のスタンダードである。それ以前は『Cecil Medicine』がスタンダードだったが、当時は多少古めかしくなっていたようだ。ちなみに後者は現在の主幹の名を入れて『Goldman-Cecil Medicine』になり、最新は第26版だ。

『ハリソン物語』は2部に分かれていて、第1部が初版から第11版までの編者の回想、第2部がその他の編者や関係者の回想。

 

もくじ

 

Harrison氏は、初版から第5版までの編集主幹を務めた。出版社からの主幹の依頼を断るために、編集方針などの無理難題を用意したが、ことごとく賛同されてしまい、いつのまにかやる気になっていたという。

 

初代編集主幹のHarrison氏

 

初版をまとめるにあたって、編者らは繰り返し編集会議を重ねた。Harison氏が主幹を断るために用意した無理難題の1つ、リゾート地での会合「ながい打合せ」もあった。編集者が家族も含めて一堂に会し、午前中に編集会議、午後にはレクリエーションで親睦を深め士気を高めたという。初版で使われたシグナル・マウンテン・ロッジはいまも続いている。

 

「ながい打合せ」

 

『ハリソン内科学』で導入された編集システムの1つに「ウルフ・システム」がある。匿名の査読者が原稿をチェックして質を高める。「ながい打合せ」は、こうした批判的なブラッシュアップが殺伐とせずに建設的でいられたのに役立ったようだ。

編者には大学の研究者だけでなく、臨床医も含められた。Resnik氏もそのひとり。初版から第5版までの編者を務めた。Resnik氏の回想は短く、控えめで、文学的だ。

 

Rensikの回想

 

小冊子の発行人であるMEDSiの代表取締役(当時)若松氏が序文を書いている。「グローバル・スタンダード」を日本にもたらそうという気概がこころづよい。

日本にも立派な医学書は多数ある。とはいえ、英語圏でのスタンダードと隔絶されれば、ガラパゴス化の恐れが常にある。ベストセラーを継続的に日本に日本語でもたらしてくれる出版社はありがたい。

かくいう『Harrison’s Principles of Internal Medicine』は、2022年に第21版になる。現在の日本語版第5版は原著第19版の翻訳なので、キャッチアップを期待したい。

 

MEDSi代表取締役(当時) 若松氏の序