グレイ解剖学 原著第4版
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『グレイ解剖学』が改訂され、原著第4版の翻訳になった。原著からのタイムラグが6か月なのは、医学専門書としては早い。原著の制作に並行して日本語版も制作されていたのだろうか。
原著の紹介の記事に沿って、この日本語版をみていこう。
ペーパーバックにコート紙のカバーと帯が掛けられている。表紙に解剖図と医用画像とが対比されていて、本書で画像解剖学がフィーチャーされているのを物語っている。著者3人の内、R.L. Drake氏とA.W. Vogl氏は解剖学者、A.W.M. Mitchell氏は医用画像の専門家だ。翻訳は秋田恵一氏。
局所解剖に沿った肉眼解剖学を軸に、臨床医学や画像医学ともよく投射するように企画されている。発生学は最初の章のほんの概説だけ、生理学・生化学は含まれない。これらまで含むとボリュームが膨らむばかりで質が低下する上、他によい教科書がある、との理由だ。
イラストはこれまでと同様、スッキリとしたコンピュータグラフィックスで、R. Tibbits氏とP. Richardson氏の作品。
本書には日本語版と原著の両方の電子版が附属している。Mac/Windowsではブラウザで、iOS/Androidでは専用アプリを使う。日本語版はeLibraryにあり、紙面そのままを画面で読める。英語版はStudentConsultにある。リフロー型で、スマートホンなどの小さな画面でもよみやすい。また、紙面にはない、学習用コンテンツも含む。原著の英文は平易、簡潔で、よみやすい。医学英語になれるのにも勧められる。
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電子版へのアクセスコードはスクラッチで
原著第4版での主な変更は下の通り。
- 増え続けるコンテンツに対処するために、臨床症例などの紙面にあった内容を電子版に移動。
- 臨床関連の囲み記事とそれに使われる臨床画像の増強
- 電子版の増強
- 系統解剖学の章を追加
- 神経解剖学の章を追加
- 自己学習用のコンテンツの増強
このうち、日本語版では臨床症例はすべて冊子体に収録されている。原著第3版からのページ数の増加は9ページ。全体の構成は同じ。価格は変わらず。
大きな美しい図を使ってゆったりとページレイアウトされているのは従来と同様。本文中の重要な部分にはマーカーがあらかじめ引かれている。
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大きな美しい図版とゆったりしたレイアウト
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あらかじめ引かれたマーカー
第1章が解剖学の概説。電子版に系統解剖学が入ったので冊子体はごく簡単な内容だが、方向用語など要点は押さえられている。また医用画像の概説がある。
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第1章の方向用語
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医用画像の概説
第2章以降が局所解剖学で、本書の根幹を成す。章の順番はおよそ解剖学実習の順番になっている。解剖学実習の予習に使えば、実習で学ぶべきことを見おとさないですむ。
各章とも概観から始まり、局所解剖、臨床症例と続く。詳しさが層状になっているので、概観までをまず読み通す使い方もいいだろう。臨床症例は紙面上には各章とも10数件が掲載されている。
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章の初めの「概観」
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「局所解剖」
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臨床症例
本文中に増えたのが、「臨床関連事項」だ。数が増えただけではなく、新しい医用画像が豊富に使われている。
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臨床的事項。すぐ近くに乳腺を説明する本文と図がある
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肝区域の分類
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脊柱の癌とMRI、PETCT
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SPECT
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網膜のOCT画像
付図には術中画像も多く使われている。
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甲状腺の術中画像で反回神経との位置関係を示す
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術中画像と解剖図とが対比される
一部の画像には簡単な線画がついている。これを空で描けるように練習すると、自分自身の知識の整理から医師になってからの診察時の説明まで、いろいろと役立つはず。
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心臓内の血液の流路をあらわす線図
電子版には神経解剖学の章もある。冊子体の他の章と比べると、付け足りのような感がある。使われている図の多くは、エルゼビア社の他の書籍、たとえば『臨床神経解剖学』などから流用されているようだ。
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神経解剖学
本学の履修生には本書がよく使われる。
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2018年度の解剖学履修生の教科書の使用状況
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