いらすと! はじめての解剖学
![](https://i0.wp.com/anatomy.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/IMG_3094.jpg?resize=1320%2C500&ssl=1)
『イラスト解剖学』の筆者による解剖学の参考書。タイトルはふんわりとしているけれど、本書の制作意図はもっと切迫したものだ。序文に定義されている。
実は,本書は「試験前なのにどこから勉強したらよいか分からない」という方を想定した本です.
そういう履修生は少なからずいる。相談を受けたときに、『イラスト解剖学』は「とりあえず読め」と勧める本のひとつだ。本書も選択肢になるかもしれない。
ピンチの履修生のために、一つのテーマごとに1ページ(いくつかは複数ページ)にまとまっている。過去問によくでている部分をかいつまんで読むのに便利だ。説明は主に箇条書きで整理されていて、密度が高い。そういえばどこかで出てきてたかな、くらいの状況を補強できる。
図は『イラスト解剖学』と同じタッチの模式図だが、彩色されていてみやすい。図の中の文字は植字で、手書き文字による誤字の心配はない。
![IMG_3097](https://i0.wp.com/anatomy.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/IMG_3097.jpg?resize=2048%2C1365)
1ページごとに模式図と文章で一つのテーマがまとめられる
肺区域、冠血管、肝区域など、臨床に向けた内容も押さえられている。形態を理解するのに役立つ局面については、発生学も含まれる。また、神経解剖学も含まれるので、その分のまとめも一冊で済むのは助かる。
発生学や神経解剖学には多少クラシックな箇所もある。臨床上重要になりそうな形態やバリエーションが省略されることもある。試験直前にはどうでもよいことかもしれないが。
![IMG_3098](https://i0.wp.com/anatomy.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/IMG_3098.jpg?resize=2048%2C1365)
肺区域。B6は背側に向けて描いてほしい
![IMG_3099](https://i0.wp.com/anatomy.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/IMG_3099.jpg?resize=2048%2C1365)
冠動脈。右優位の形態についてだけ
![IMG_3100](https://i0.wp.com/anatomy.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/IMG_3100.jpg?resize=2026%2C1351)
大動脈弓の発生。反回神経も描かれていたらよかった
![IMG_3101](https://i0.wp.com/anatomy.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/IMG_3101.jpg?resize=2048%2C1365)
ヒトにも胎生期に鰓があったかような反復説はちょっと困る
2ページにわたるテーマのとき、見開きではなくページの表裏になっていることが少なからずある。見開きにレイアウトできていたら、一覧性が増したはず。
本書には電子版があり、冊子体を購入するとそのアクセスコードがついてくる。電子版はAdobeのDRM付きPDFで、iOS、Android、Mac、Windowsで読める。ただし利用するにはいくつか作業をクリアしないといけない。
- Adobe IDを取得(無料)
- Dear Mediへ登録(無料)
- Adobe Digital Editionsのダウンロード
- アプリをAdobe IDで認証
- コンテンツの「購入」(コードで無料になる)
- コンテンツのダウンロード
ダウンロード期限は購入後1年間、電子版をよめる機器は1台だけと、制限が厳しい。アクセスコードは四方が閉じられた綴じ込みの中にあり、ひらくのが大変だった(ミシン目もない)。
電子版はPDFなので、紙面のまま表示される。iPadなら読みやすいだろう。図の解像度が高い。
表示できるのは1ページだけで、iPadを横にしても見開き2ページ表示はできない。文字部分にはハイライトを入れられるが、しばしばねらった文字を選択できない。手書き文字は入れられない。これらはAdobe Digital Editionsの制限と思われる。
![IMG_3095](https://i0.wp.com/anatomy.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/IMG_3095.jpg?resize=2048%2C1366)
電子版のアクセスコード付き。開くのが大変だ
![IMG_0007](https://i0.wp.com/anatomy.med.gunma-u.ac.jp/wp-content/uploads/2016/02/IMG_0007.jpg?resize=1303%2C869)
iPadでみた電子版
最後に、「ゼロ解剖」な履修生が試験直前に本書を一周こなしたとき、試験で何割とれるだろうか? 全くの「スクラッチスタート」では、合格の可能性は少ないかもしれない。説明文の密度が高いので、聞いたことがあるという程度でも知識がないと、いっぺんには頭に収まりにくいだろう。また、実地試験は日ごろから地道に実習に取り組んでいないとむずかしい。
また、本書の構成は系統解剖学に沿っている。解剖学実習が授業の大部分を占める本学のような場合は、本のあちこちを探して、飛び飛びに読むことになる。やはり『グレイ解剖学』を早くに読んでいたらよかったのに、とはなってしまう。
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