ペンライトを買う

対光反射や口腔の診察でペンライトが必要になるけれども、診療向きのペンライトを選ぶのは難しい。普通の店にあるのは明るすぎたり色が青白くて使えない。「医療用」として売られているのは、安いのから高いのまで脆弱なのが少なくない。

オススメ

高演色性LED、低輝度、頑丈な下の2点がオススメ。

医療用ペンライトの条件

医療用のペンライトには、いくつか条件がある。

  • 明るすぎない
  • 高演色性(色が正確に見える)
  • 配光が均一でシャープ
  • 片手でオンオフできる
  • 丈夫で壊れにくい

ペンライトは病院ではつぎの用途で使われる:

OSCEの評価基準から:

瞼裂・瞳孔/対光反射 □ ペンライトを見せながら、光で眼を照らすことを患者さんに告げる。 □ 患者さんの視線の外(そと)側からペンライトを移動させ、瞳孔に光を当てる。 □ 光を当てた側の瞳孔(直接対光反射)と反対側の瞳孔(間接対光反射)の収縮を観察する。□ 必ず両側を検査する。

口唇・口腔・咽頭 □ ペンライトを適切に使用する。観察部位に的確に光を当て、口腔内に入れたり口唇に触れたりしないようにする。

病院にあるペンライトを借りられるかもしれないが、電池切れだったり、故障していたりで使えないかもしれない。自分用に信頼できるペンライトを用意して、白衣のポケットに入れておこう。ペンライトが必要な場面には、ミッションクリティカルなのが少なくないからだ。

一般用のペンライトは光源がLEDになっていて、小さくても明るいことがセールスポイントになっている。しかし、これで被験者の瞳に光を当てると、明るすぎて被験者を眩しがらせてしまう。また、青みがかった光を放つのが多い。口腔などの診察では実際より血色がわるく見えてしまい、判断を過つ。医療用のペンライトにはハロゲン電球や、LEDでも高演色性の特殊なのが使われている。

配光も重要で、縁がハッキリしているほうが、ペンライトを振って瞳に光を当てたり外したりがやりやすい。

片手でスイッチを操作できることも大切。ペンライトを使う診察の時には、舌圧子など他にも保持するものがあるから。プッシュスイッチがよい。ひねってオンオフするスイッチは、両手が必要になるので煩わしい。

最後に、丈夫さや信頼性も大切なポイント。トリアージで急いでいるときや、ご家族の見守る前で対光反射をチェックしようというようなときに、ペンライトが壊れていて点かないとなったら困る。着替えの時にポケットからペンライトを落とすこともある。落としても壊れない丈夫さが必要だ。

どんなペンライトがあるか

医療用のペンライトは一般医療機器(クラスⅠ)の汎用光源に分類される。承認は不要ながら、製造販売には厚生労働省への届け出が必要。製造販売に制限があるだけで、一般用のペンライトでも医師の裁量で使える。

一般用、医療用とも、無骨なデザインのが多い。ナース用品のショップなら、かわいいデザインのペンライトがある。

一般用で医療用にも使えるもの

日亜化学製の高演色性LEDの使われているペンライトが医師に好まれる。

LUMINTOP IYP365 日亜LED

中国のメーカーLumintop社のペンライト。一般用だが医師にも好まれる。日亜化学製の暖白色(4000K)高演色性LED。単4電池2本。スイッチで明るさを順にMID(25ルーメン)、LOW(1.5ルーメン)、HIGH(125ルーメン)の3段階に切り替えられ、口腔の診察、対光反射、夜間の見回りに対応できる。一般内科ならペンライトは口腔に使うことが多いので、MIDで最初に点灯するのが合っている。2メートル防水。落下耐久1.5メートル。アルミ製(23グラム)のほか、真鍮製、チタン製のもある。Cree社LEDのバージョンもあり、演色性に劣るので、注文時に確認を。2018年6月には、シルバーとピンクが追加。LOWが1ルーメンと暗くなって、瞳に当てても眩しくない。瞳孔計カードが添付される。レビュー

単4電池1本のバージョンもある。

NITECORE ナイトコア MT06MD

中国のメーカーNitecore社の医師や救急救命向けに企画されたペンライト(国内では医療用としては販売されてない)。日亜製LEDが使われ、3段階光量切り替え。上のIYP365との違いは、LEDの色温度が5000K(白色)なのと、スイッチONの最初の光量がLOW(4ルーメン)で、次にMID(45ルーメン)、HIGH(180ルーメン)と順に明るくなること。LOWでスタートするのは対光反射に使う機会が多い場合に便利。4ルーメンは瞳に当てると眩しいが、反射を確実に確認したい救命救急には適当。2メートル防水。エタノール消毒対応。落下耐久1.5メートル。瞳孔計が軸にレーザー刻印されている。レビュー

GENTOS フルークス LU-190

東京の池之端に本社のあるジェントス社が企画販売するペンライト(製造は中国)。一般用だが医師にも好まれる。高演色性の白色光LEDが使われている。口腔内にはちょうどいい明るさ。対光反射には少し眩しいので、掌で光をおおいながら使う。光量は1種類だが、スイッチ半押しで一時点灯するので、ちょっとだけ光がほしいときに便利。均一な円形の配光。レンズの色収差による色付きが光の縁にでるが、レンズにスコッチ・メンディングテープを貼れば色は消える。防滴仕様。旧型のLU-185はレンズがなく色付きが出ないのでプレミアがついていたが、配光が不均一。レビュー

LUMINTOP TOOL AAA COPPER

LUMINTOP社の単4電池1本のペンライト。日亜LED、防水、耐衝撃性はIYP365と同様。MID(32ルーメン)、LOW(5ルーメン)、HIGH(110ルーメン)の3段階。日亜LEDのには純銅製とチタン製がある。Cree製LEDのバージョンもあるので間違わないよう。レビュー

単3電池1本のもある。

HELIUS Beta VI

HELIUS社ペンライト(国内では医療用としては販売されてない)。日亜製LED、IPX8防水、1.5メートル対落下。HIGH(230ルーメン)、MID(66ルーメン)、LOW(4ルーメン)の切り替え。メモリー機能があり、3秒以上オフ後にオンにすると、最後に使用した光量で点灯する。エネループのような負極が広い電池はランプ内部で短絡して点灯してしまうなど、不具合の報告がある。

医療用

医療用ペンライトには、安価なのと高価なのの2種類しかない。いずれも故障しやすいというレビューが目立つ。2019年1月までに多くの安価な医療用ペンライトがAmazon.co.jpからリスト落ちしたようだ。

Primacare DL-9223 Disposable Diagnostic Penlight

使い捨ての安価なペンライト(米国では6本パックで$10未満)。光源は電球で低輝度なので、対光反射向け。電池交換はできないが、電球自体の寿命が電池より少し長いくらいなので、電池交換の意味はない。すぐなくすし壊れるから安いのでいいや、という状況なら。

Welch Allyn ハロゲンペンライト 76600

医療用の高価なペンライト。電球(ハロゲン球)で、暖色で明るすぎない。ハロゲン球のフィラメントの像が投影されて配光のムラになることがある。ランプ寿命は約10時間。落としただけで球切れになる、スイッチが壊れやすい、壊さないよう慎重に取り扱っているなど、レビューからはとても脆弱なことが伺われる。交換用電球も高価。レビュー

Spiritmedical LEDペンライト

電灯色LEDの使われたペンライト。プッシュスイッチで連続点灯、クリップで押している間だけ点灯。

その他

かわいいペンライトはナース用品の専門店で

LEDはダメなのか?

LEDのペンライトは「明るすぎる」「色が青い」から医療用にはダメだという意見がある。ホームセンターや100円ショップで買ってくると、確かにそういう意見になるかもしれない。日亜の高演色性LEDを使った低輝度の製品を使えば、意見は変わるだろう。

電球は電池が消耗してくると暗く、色温度も低く(赤く)なるので、再現性に劣る。LEDで制御回路のある製品は、電池の消耗による光の変化が少ない。

LEDでも安価な製品は電池にLEDが直結されているので、電池の消耗で暗くなる(色温度は変化しない)。また電球色のLEDが使われることもあるが、演色性は高くないので傷などの病変が見にくい場合がある。

高演色性LED

日亜化学工業は青色発光LEDを世界で初めて製品化したメーカー。続けて青色発光LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDを開発した。ペンライトにしばしば使われている「219」は表面実装型LEDで、シリーズ化され多数のバージョンと世代がある。高演色性の現行製品にはNVSW219C(色温度5000K)とNVSL219C(色温度4000Kと3500Kの2種類)とがある。

演色性

照明装置で物体を照らしたとき、基準となる光源と比較して、その物体の色調をどれだけ正確に再現できるかの程度を演色性という。基準として使う光源は、色温度5000K未満は黒体放射、それ以上は国際照明委員会(CIE)によって数値的に定められた仮想的な光源(CIE昼光)が用いられる。基準となる中間色8色の再現性を平均した平均演色評価数(Ra)が90を超えれば、高演色性とみなせる。

色温度

物体を高熱にしたときに発する光(黒体放射)のスペクトルは、温度に依存する。温度が低いと光は赤黒く、温度が上がるにつれて赤、黄色、白、青白にみえる。このスペクトルの違いを、熱した物体の温度で表したのが色温度である。

黒体放射のスペクトル(Wikipedia

カラーフィルム時代の写真工業では、陽光(太陽光と青空の混色)に相当する5500Kと、スタジオ撮影で使われていたタングステンランプの3200Kが標準とされた。グラフィックデザインでは6500Kないし5000Kが使われる。多くのパソコンのモニタの色温度は6500Kで、sRGBの基準でもある。出版分野では印刷物が昼光下で見られることに合わせ、5000Kが標準とされる。日本のテレビ放送の規格(NTSC-J)では9300Kが基準とされる

内視鏡のキセノンランプの色温度は約6000K、検眼鏡などのハロゲンランプは約3500Kだが、現在はLEDやレーザーで代替されることが多い。

白色LEDや昼光色蛍光灯の発光は黒体放射ではなく、スペクトルも黒体放射とは異なるが、ヒトに知覚される色調から相当する色温度を当てはめることができる。

日亜製LED NVSL219C(4000K) のスペクトル(青色LEDの450nmのピークと蛍光との混色)

日亜製超高演色白色LED (Optisolis™)のスペクトル(ペンライトへの使用例はまだないようだ)

アップデート

  • 2019/1/11 多くの「医療用」ペンライトがAmazon.co.jpのリストから削除されたことに対応し、製品入れ替え
  • 2018/4/17 ペンライトを一つ追加
  • 2018/1/9 LEDに関する説明を追加
  • 2017/10/23 更新
  • 2017/8/13 更新
  • 2017/6/13 最初の投稿

アイキャッチ画像:Pixabay

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