リウーを待ちながら

「リウー」は、カミュの小説『ペスト』の主人公の医師の名。つまり、本書は、ペストをモチーフにした医療マンガ。本学医学図書館に蔵書がある。

新型コロナウイルス前の作品だが、再評価された

舞台は静岡県の架空のまち、横走(よこばしり)市。自衛隊駐屯地と富士演習場が近い。設定上の半架空の地図があり、それからすると、御殿場市の246号線と138号線の交差するあたりがモデルだろうか。

主人公は市中病院の女医、玉木。そこに運ばれた急患が急速に悪化する。玉木は何らかの未経験の感染症を疑い、検体を「疫研」(国立感染症研究所をモデルとすると思われる)に送る。

翌朝、患者は自衛隊病院に移送されていた。院内や市中でも同じような患者が発生し、玉木は感染症のアウトブレイクを疑う。疫研から派遣された専門家、原神(はらがみ)により、それがペストであることが知らされた…

ペストはペスト菌 Yersinia pestis の感染症。ネズミなどのげっ歯類が保菌し、ノミなどの節足動物を介してヒトに感染する。動物からの直接感染、ヒトーヒト間の飛沫感染もある。日本では1927年以降感染例はないが、いまも世界で患者が報告され死亡者もある現役の感染症だ。

国内で使えるワクチンはない。

臨床像には、リンパ節を主な感染巣とする腺ペスト、菌血症になる敗血症性ペスト、肺に感染して肺炎を起こす肺ペストがある。治療されない場合の腺ペストの死亡率は30〜60%。肺ペストが最も危険で、急速に悪化して24時間以内に死亡するうえに、ヒトーヒト間の飛沫感染を起こしてアウトブレイクになる。

治療は抗菌薬と全身療法。国内では、ストレプトマイシン、ドキシサイクリン、レボフロキサシンなどが使用できる。治療困難な耐性菌は知られていない。

感染法上は、最も危険な「一類感染症」に分類されている。

2017年のマダガスカルでのアウトブレイクでは、基本再生産数は1.73、死亡リスク5.49%と推定された。

 

最初の患者

 

政府は新型インフルエンザ等対策特別措置法(新型インフル措置法)に基づいて、緊急事態宣言を発出し、横走市を都市封鎖したが…

新型コロナのような緊急事態宣言が可能なのが、新型インフル措置法である。同法は新型インフルエンザだけでなく、国民に重大な影響を及ぼすおそれのある感染症には適用できるようになっている。

新型コロナでは2類だ5類だとの論議があるが、感染症法上は新型コロナは、一旦「指定感染症」(2020/2/7〜2021/2/13)になったあと「新型インフルエンザ等感染症」に分類された。

 

アウトブレイク

 

緊急事態宣言発出と都市封鎖

 

風評被害、感染者や医療従事者への差別、感染者の自責など社会の激震も描かれ、いずれも新型コロナで現実になった。

医療監修は、ヨシザワアキラ氏。TBSドラマ「インハンド」(2019)の原作マンガや、トリパノソーマ感染症のシャーガス病を題材にした医療マンガ『ネメシスの杖』(2013)、ウイルス感染症のアウトブレイクを描いた「Final Phase」(2011)の監修も務めた(「Final Phase」のプロットは、病原体の違い以外は『リウーを待ちながら』と類似している)。医療監修がしっかりしているので、医療関係者もディテールの粗に煩わされずに読める。

同じように、新規の感染症のアウトブレイクを描いた映像作品に「感染列島」がある。ペストを含め、感染症とヒトとのたたかいをまとめた本がいくつかある。


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