スマホ/タブレットに入れる治療薬の本はどれがよいか

臨床実習や研修では治療薬のマニュアル本があると便利だ。白衣のポケットには入りきらないボリュームなので、電子版を使いたい。どれがよいか考えよう。
今日の治療薬か、治療薬マニュアルか、治療薬ハンドブックか
アプリにも便覧(添付文書並の情報)と治療薬の解説の両方を含んでいてほしい。『今日の治療薬』、『治療薬マニュアル』の、いずれも医書.jp版、あるいは『治療薬ハンドブック』のアプリが検討できよう。
『今日の治療薬』アプリ医書.jp版は2022年度版からサブスクリプションに移行し、コンテンツが毎月アップデートされることになった。情報が月単位でアップデートされるのは好ましい。検索履歴が便利。
一方で『治療薬マニュアル』アプリは年度版。『治療薬マニュアル』の解説は詳しく勉強になる。
『治療薬ハンドブック』アプリは、無料のアプリをインストールして冊子にあるコードでフルセットにして使う。解説には薬剤師向けの独自の情報もある。
いずれもお試し版がある。実際に試すのがよい。同じ薬、同じ範疇の解説をいくつか決めて、比較してみよう。現場でも使って使い勝手を試そう。
- 実習先・勤務先にある冊子体と同じのを選ぶ
- それと違う方を選ぶ
- 毎年違うのを買う
- 全部買う
評者の選択は、サブスクリプションで最新の情報が得られることから、『今日の治療薬』医書jp版。つぎは、ニュース配信があることから『治療薬ハンドブック』。解説を勉強する気なら『治療薬マニュアル』の医書.jp版。
機関購入のコンテンツ
所属の大学や病院で、冊子体を大量購入していたり、ネット版のライセンスがあるかもしれない。まずそれをチェックしよう。
たとえば、群馬大学医学図書館には医学書院の「今日の診療プレミアム」のライセンスがあり、そこに『治療薬マニュアル』も含まれる。昭和キャンパスのネットワーク内なら無料で使える。(同時ログイン数≦5;使い終わったらログアウトを忘れずに)

「今日の診療プレミアム」から
今日の治療薬
『今日の治療薬』は、治療薬のマニュアル本のなかでは最もよく売れている。冊子体と電子版は別売り。電子版には、isho.jp版と m2plus版とがある。 isho.jp 版の方がおすすめ。
isho.jp 版はサブスクリプションで、毎月コンテンツがアップデートされる。表示はiPhoneからiPadまで画面に合わせて最適化される。解説を読んで治療薬について勉強するのにもいい。コンテンツは端末にダウンロードされるので、インターネット接続できない場所でも使え、通信量をムダにすることもない。
薬のページから解説のページにリンクがあるのが、ちょっと概要を押さえたいときに便利。解説が要約的で、しばしばまとめの図表があり、手短に概略を得るのによい。図表は小さなサムネイルからリンクで辿る。小さな図表なら拡大しなくてもみられるので、インラインで表示してもよさそう。
m2plus版は冊子体のうち便覧部分のみ収録。解説部分はなし。文字が詰まっていて、読みづらい。

今日の治療薬2019 m2plus版
治療薬マニュアル
治療薬のマニュアル本のなかでは、解説が最も詳しい。解説を落ち着いて読んで学ぶのに良い。本のボリュームも最大。
冊子体にWeb版のライセンスが付属している。Web版の内容は冊子体と同じ。解説を読んで勉強もできる。ただし、そのライセンスが発行年の翌年1月末で切れ(買ってから1年ではない)、以降は全く使えなくなる。データの更新だけできないというレベルではない(学生のみ翌々年までの延長キャンペーンあり)。しかも、冊子体発行時のWeb版は前年度版で、同年度版がみられるのは4月から。また、オフラインでは使えない。
冊子は買わずに、isho.jp版のアプリを買った方がよい。コンテンツやデザインはWeb版の「今日の診療プレミアム」を踏襲している。アプリのコンテンツは売りきりのダウンロードで、ライセンス切れの心配はないし、オフラインでも使える。句読点の幅や行間が広く、色分けされたレイアウトが美しく、読みやすい。
アプリ版でも詳しい解説が読めるのが良い。個々の薬にも「臨床解説」という追加の説明があるのがよい。
検索履歴がでないのは残念。
iPadでは「見出しナビ」が左側に、本文が右側に表示される。マルチタスク機能を使えば、Safariなどで他の情報もいっしょにみられる。iPhoneでも「見出しナビ」をタップすると、見出しがポップアップされる。文字の大きさを簡単に変えられる。
電子版の発行は3月で、冊子体の発行の1月より2か月遅れる。
治療薬ハンドブック
治療薬ハンドブックの特徴は、粉砕可否など薬剤師向けの情報が充実していること。会員登録して冊子体に付属しているコードを使うと、フルセット版のアプリを使えるようになる。添付文書の情報に加えて、総説、臨床情報、ニュースなどを読めるようになる。
以前のアプリでは添付文書程度の情報しか得られないために本書のアプリは非推奨だったが、2022年版のときのアプリのアップデートによってアプリの内容が充実し、有用性が他の治療薬の本並みになった。
じほう社は、医療システム向けの医薬品情報の販売もしている。電カルで知らず知らずにみているかもしれない。
医療用医薬品 情報検索
「医療用医薬品 情報検索」は独立行政法人 医薬品医療機器総合機構の提供しているサービスで、無料。
無料のアプリ
治療薬を含む医療情報を提供するアプリがいくつかある。もし利用登録が必要なものならば、無料であることと引き換えに、利用者の個人情報がサービスを提供する運営会社や第三者に利用されることを意識しよう。検索・閲覧した情報を集約すれば、どんな医療に関係しているかもわかってしまう。医療に関する情報に守秘義務があることを勘案すれば、無料アプリの利用には慎重な配慮を要する。
利用する前に、必ず運営会社のホームページにアクセスし、プライバシーポリシーを確認すること。特に、個人情報の第三者提供の項目に注意しよう。情報の提供を受ける「第三者」が開示されているかも重要。また、会員の退会の方法が提供されているか、その際に個人情報も削除されるのかも要確認。運営会社がプライバシーマークを取得しているかも確認しよう。運営会社が、事業をどのようにマネタイズしているかを疑おう。
更新履歴
- 2022/11/26 冊子体のデータを2023年版に更新。『治療薬ハンドブック』アプリの説明を新版に合わせて書き換え。
- 2022/4/18 今日の治療薬アプリをサブスクリプション版にアップデート。他は古いまま。
- 2022/1/11 冊子体のバナーを2022版と差し替え。
- 2021/3/11, 15 isho.jp版のアプリを2021年版に更新。無料アプリの項目を更新。
- 2020/3/18 isho.jp版のアプリを2020年版と差し替え。
- 2020/1/20 冊子体のバナーを2020年版と差し替え。各々のアプリの状況を確認(電子版はまだ2019年版)。キャプチャを数点追加
- 2019/4/5 2019年版にアップデート
- 2018/4/10 最初の投稿
アイキャッチ画像:Wikimedia