リットマン聴診器クラシックⅢ
リットマンの一般診療向けの聴診器「クラシックⅢ」。リットマンの聴診器では最も広く使われていて、米国Amazonの聴診器のカテゴリーでは1位。3,600件を超えるレビューがある(循環器向けのカーディオロジーIVのレビューは800件強)。血圧測定から心雑音の聴診、忙しく飛び回る現場まで、多目的に使える。
クラシックⅢは「クラシックⅡS.E.」の改良型で、ダイアフラムが一面から大小二面になった。また、ダイアフラム自体も、カーディオロジーIVと共通のリム一体のタイプに変更された。リムとダイアフラムの間に隙間がないので、汚れが隙間に入り込むことがなくなり、衛生的。チェストピースはステンレス、バイノーラルの耳管(金属の部分)はアルミ。
カラーバリエーションが豊富で、金属部が着色されたものは「エディション」とよばれる。写真のモデルは、金属部が銅色でチューブが褐色の「チョコレート・カッパー・エディション」。
チョコカッパー、かわいいよね。ひそかに頼りにしてる看護師さんとオソロなんだよ
リットマン聴診器クラシックⅢ – Anatomy https://t.co/un4rGBB6tK— 解剖ちゃん (@kaibo_chan) May 9, 2018
より鮮やかな色のモデルもある。ただし、ボールペンなどのインクがチューブに色移りして落ちないことがある。Amazonのレビューに、明るい色のチューブだと汚れが目立つとの意見をみかける。書類などの上に不用意に置かないよう注意しよう。
ダイアフラムはサスペンデッド・ダイアフラムなので、体表に押しつける強さによって低音から高音までスムーズに特性を変えられる。大小のダイアフラムを使い分ければ、小児から大人まで、また肋間の痩せた人にも対応できる。OSCEのときは、小さい方のダイアフラムを付属のノンチルリムに付け替えれば、ベルとして使える。
カーディオロジーIVと比較
まず外形をみると、全体にクラシックⅢの方がカーディオロジーIVより小さくまとめられる。チューブが細くしなやかなためだ。診察時の取り回しや携帯のしやすさはクラシックⅢのほうがよい。価格も半分くらいだし、気負わずに使える。どちらもカラーバリエーション豊富だが、クラシックⅢの方が多い。
チェストピースはカーディオロジーIVの方が大きい。ダイアフラムは共通。
カーディオロジーIVのチューブが太いのは、左右2本の音道が一本のチューブに通っている「ダブルルーメン」だから。一方、クラシックⅢは「シングルルーメン」なので、細くしなやかだ。クラシックⅢは、チューブを1周半〜2周丸めて白衣のポケットに収まる(スクラブやケーシーのポケットだとハミ出るかもしれないが)。カーディオロジーIVのチューブだと、無理なく丸められるのは半周〜一周だ。2周以上はバイノーラルの「∀」の形の部分が前後に曲がってポケットがふくれてくる。
カーディオロジーIVに比べてクラシックⅢの音はどうか。どちらも同じくらいの音量でよく聞こえる。呼吸、ラ音、心雑音、グル音、気管内挿管の成否などをチェックするようなとき、診断に差が出るとは思われない。
カーディオロジーIVとクラシックⅢとを掛け替えながら落ち着いてよく注意して聞き比べると、カーディオロジーIVの方が低音の量感が少しだけ豊かなのに気づく。スピーカーや楽器と同様、低音には装置の大きさや質量が影響する。循環器専門医がベンチマークと頼るポイントだろう。しかし、カーディオロジーIVも電子聴診器の増幅には及ばない。いずれにしろ確定診断にはエコー、心電図、心カテなど他の所見が必要だ。
Amazonのレビューには、クラシックⅢは、クラシックⅡS.E.から性能が大きく改善されたとの意見がある。実際に聞き比べてみると、低音域は違わないように思われるが、押しつける圧による特性変化がクラシックⅢのほうがハッキリしていて、高音域をより限定して聴けるようだ。ダイアフラムの変更によるものだろうか。
いずれにしても、サスペンデッド・ダイアフラムを上手に使う練習の方が重要かも知れない。ジェームズ・ワレンの言葉を思い出そう。
クラシックの変遷
- 1996年、クラシックⅡS.E.(Special Edition):サスペンデッド・ダイアフラム採用
- 2015年、クラシックⅢ:リムと一体化したダイアフラムを両面に採用、バイノーラルの耳管が太くなり、厚くて皮脂に強いチューブ採用
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