解剖学カラーアトラス 第8版

「ローエン–横地」として知られる『解剖学カラーアトラス』の日本語版が、原著の改訂に続いて改訂された。

写真を主とするアトラスの代表的なものだ。原著はタイトルが変更され、表紙の趣向も変わったが、日本語版は従来親しまれてきたものを踏襲したようだ。第1版は1983年。日独の解剖学者や外科医らによって継続的に内容が更新されている。この版でも多くの写真が差し替わっている。

標本が計画的に緻密に解剖されており、それを卓越した技術で撮影されている。実際に解剖体を写真撮影してみれば痛感するが、解剖している間はわかっていたはずのものが、写真になると何が写っているのかわからなくなることは多い(実地試験で写真を使うときに苦労している)。本書の写真は、写真だけでもわかる。

今回の改訂では写真の理解をさらに促すべく、写真に対応する模式図の大半が新たに描き下ろされ、多く追加された。

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眼窩・頭蓋底から脳幹まで剖出された神経。緻密な計画と描出による標本が優れた撮影技術によって再現されている。模式図がさらに構造の理解を助ける

巧みな剖出は、実際の解剖学実習では追い切れない。実習中に参照すれば参考になることが多いだろう。

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クモ膜下腔の標本。「クモ」というのが実際にどんな感じなのか、わかる本は少ない。
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区域気管支の剖出。実習で実際に剖出するときに直接参考にできるはず。

序文に「解剖体の同じ部位を、MRIやCTといった臨床画像と相関させて直接に見比べることで、最も学習効果が得られる」とある。そのことば通り、今回の改訂で、医療画像が最新のものに刷新され、増強された。多くは標本と対比できるようにレイアウトされている。本学の「CTを組み合わせた解剖学実習」と同じ志だ。

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気管支と肺動静脈を剖出した標本と、肺動静脈が描出されたCTのthick sliceが対比される。
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高速CTから再構築された心臓と冠動脈の立体像と、対応する心臓の標本や模式図
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見開きにレイアウトされた、心臓の標本、模式図、心臓MRI
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頭部の標本と同じに「解剖」されたMRI

日本語版にだけ、巻末に4ページの付録がある。もう少し充実させてもよい気がする。

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日本語版にだけある付録

解剖学のテキストでは、全体に対する頭頸部の割合が多いのが一般的だが、本書は中でも充実している。

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青いサムネールのページが頭頸部

日本語版に電子書籍がないのは残念だ。原著の『Anatomy: A Photographic Atlas』にはKindle版やInkling版もある。Kindle版はeTextbookなので、紙面と同じに表示され、iPad AirやProなら読みやすい。また、原著にはあるthePointの練習問題集Question Bankも付属しない。

医学書院は、コメディカル向けに電子書籍のプラットフォームiTexを提供しているし、『今日の治療指針』や『治療薬マニュアル』のように、冊子体に電子版が付属しているのもある。本書のような基礎医学のテキストも電子化を進めて学習の利便性を高めてほしい。