画像診断を学ぼう 単純X線からCT・MRI・超音波まで 第2版
研修医や医学生のための画像診断学のテキスト。全体が28章にわかれていて、1章当たり10ページ強。画像が多数使われていて文章量はページ数ほどは多くない。ステップを追って全身の画像診断を学べるように設計されていて、通読して学ぶのにちょうどいい。自習でも大丈夫だろう。
画像の正常と異常とをみわけ、異常像がどのようにしてできるのかを論理的にまなんでいくようになっている。たとえば、最初の10章のタイトルはこんな感じ:
-
- 異常をみつけよう
- 正しく撮られた胸部単純X線写真をみる
- 肺の正常解剖を学ぼう
- 正常の心臓解剖を学ぼう
- 肺胞性病変と間質性肺病変を見分けよう
- 片肺の透過性低下の原因を知ろう
- 無気肺をみつけよう
- 胸水をみつけよう
- 肺炎をみつけよう
- 気胸、気縦隔、心嚢気腫、皮下気腫をみつけよう
- …
基礎医学に続いて病理学を学ぶときの困難と同じで、画像診断学を学ぶときにも、個々の疾患をよく知らないために困ることは多い。「間質性肺炎の異常影はこうだ」といわれても、「間質性ってそもそも何?」となったりする。
本書ではまず、「正常所見と異常所見を見分けられるようになる」ことを目指し、そのハードルを下げている。疾患や病態の数は無数にあり、画像だけで確定診断に結びつくのはそのうち僅かなのだから、結局この目標は実際的・実用的でもある。解剖学の授業をがんばったなら(特に本学の解剖の授業なら)、臨床医学の知識がまだでも本書を学ぶのは難しくないと思う。
第1章はクイズで始まる。本書を読み終わるころには、このクイズの答えが自ずとわかるようになる、ということだ。答えと解説は巻末にある。取り上げられるモダリティーには、X線、CT、MRI、エコー、核医学が含まれる。
第2章以降が各論になる。胸部、腹部・骨盤部、整形外科領域、頭頸部、小児科領域について、正常像を学び、つづいて代表的な異常像を学ぶ。単純なパターンマッチングではなく、解剖や病理に基づいて、像のできかたが論理的に示される。
胸部の肺野のところをみてみよう。第2章は、胸部単純X線写真が、技術的に正しく撮影されているかどうかのチェックポイントを学ぶ。
スマホで人物を撮影したのなら、ピンボケ、ブレ、露出の過不足はすぐにわかるだろう。しかし医用画像となると、変な画像がでてきても撮影を失敗したせいなのか何かの病変のせいなのか、意外と分かりにくいものだ。
続く第3章は、肺の正常解剖。正常解剖といっても解剖図や解剖写真ではなく、正常な人体を撮影した医用画像だ。
正しい撮像と正常な医用画像を学んだ後は、異常像を学ぶ。肺の異常像といっても様々あるけれども、病変の種類や病態ごとに章をわけて論じていく。まず、肺胞性と間質性の見分け。理解するのも判別するのも難しい、肺の画像診断の最初のハードルだ。それぞれの特徴的な異常像とその成因を学んでいく。
画像診断学を学ぶ段階ではまだ学んでいなそうな臨床医学のポイントは、「BOX」として簡単にまとめられている。これをきっかけに少しググれば、当面の知識は押さえられるだろう。また各章の最後には、その章の内容が「TAKE-HOME POINT」として簡潔にまとめられている。
本書には電子版が附属している。日本語版は紙面のママのPDFで、Elsevier eLibraryで閲覧できる。また対応する原著がStudentConsultでみられる。いずれも、PC、タブレット、スマホでみられる。
StudentConsult版には、冊子体の内容に加えて、追加の学習コンテンツも含まれる。冊子体には簡単にしか触れられていない核医学の内容、ビデオ、練習問題がある。練習問題は、10問ずつ(一部5問ずつ)にわけて、クイズ形式で計245問ある。画像診断の力を鍛えるには数をこなすことが重要なので、楽しんで解いてみよう。
コメントを投稿するにはログインしてください。