Medical Physiology, 3E
Amazon.comで最近評価の高い生理学のテキスト。『Boron and Boulpaep』とも呼ばれる。
米国でよく使われている生理学のテキストには、本格的なテキストとして『ガイトン』、それより小さくて勉強しやすい『コスタンゾ』、さらにコンパクトな『BRS Physiology』の3冊がある。
『Boron and Boulpaep』は『ガイトン』と同じカテゴリーのテキストだ。大学院生なら勉強に、学部生ならリファレンスとして使われそうだ。小さな教科書で概念がわかりにくいとき、このような教科書でちゃんと読んだ方がかえって理解が進むことは少なくない。
特徴は、
- 著者は複数ながら、文体に統一感があり、説明が平明
- 生化学、分子生物学、細胞生物学から臨床医学まで包括的に説明される
- 明快なイラストが多数あり文章の理解を助けている
第1版のときから、著者数名が文字通り肩と肩をならべて同じコンピュータの画面をみながら、一行ずつ文章を推敲していったという。この第3版では著者の一人が異動したために、デスクトップシェアリングを使って遠隔で同じことをした。著者・コントリビューターは30名を数えるが、実際に本のどの部分も平明で美しいリズミカルな英語だ。
多数の著者の共著だと、それぞれの章で専門的に適切にはなる一方、著者によって筆致や用語がまちまちで、読みづらいことが少なくない。一人または少数の著者ならそのようなことは少ないが、部位によって得意不得意が生じることは否めない。本書はそのような問題が低減されている。
第1章は応用生理学の基礎になる概念が、生化学や分子生物学などからまとめて解説される。続く各章でもこれら基礎から論が始まる。さらに、臨床の裏付けになるような話題まで進む。
どの部分も図表が豊富だ。イラストは入念に計画されていて、文章だけでは難しい概念も理解しやすくなっている。「The VARK Questionnaire – How Do I Learn Best?(勉強法自己調査票)」でvisualのスコアが高いひとならぴったりだ。
内容が包括的で図版が多数あるので、本の大きさ・重さは類書の中でも最大だ。『Guyton and Hall』よりも約860 g重い(9.7インチiPad Proの2台分の差)。
このような大きな本だが、冊子体を買えばStudent Consultの電子教科書が付いているので、iPadの重さだけで済む(冊子の1/8)。
2002年刊の原著第1版は邦訳がある(内容は未確認)。継続的に改訂されるとよいが。
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