新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実

ボリス・ジョンソン英国首相:新型コロナウイルスの変異はRを0.4以上押し上げる可能性がある(1:20付近)

これまでの新型コロナウイルスについてのあなたの学びはどうだったろうか。例えば英国首相のようにR(再生産数)を使って国民に訴えられるだろうか(*)。この1年は、科学リテラシーやエビデンスへのリスペクトが問われるチャレンジでもあった。年末年始を静かに過ごしながら、それを整理しておこう。

* 感染力70%増とはどういう意味か、感染拡大はそのせいか、など不明確な点は多いが、ともかく「Rが〜」といっていて、「万全の〜」とばかりいうとはなっていない。

著者は、峰宗太郎氏。Twitter上では「ばぶ先生」として知られる。米国国立衛生研究所でウイルス免疫学を研究している病理学者だ。

研究者が本を書くと、専門書のように難解になりがちだ。専門家のことばを分かりやすく専門外のひとに伝えるには、記者や編集者が普通の人の代表としてインタビューし、本に編集する手法がある(⁂)。本書は日経ビジネスの記者が専門家にインタビューしている。もとは日経ビジネス電子版の連載で、それを再編して書籍化された。

⁂『バカの壁』など

なんとなくしかわかっていなかったことを、本書を読んで整理できる蓋然性を高められる。たとえば、PCRの感度の件。感染からの時間による変動を考慮すべきと、文献を示して説明する。

 

「免疫力」— それは言うたらあかんのです

 

人口の割合で1-1/R0に免疫ができれば集団免疫になる

 

日本とフランスはワクチンが嫌いな国。慎重に進めるべき

 

最後の第9章がこれから重要になっていくので、最後まで読もう(それまでの章はその例題のようなものだ)。ノーベル賞受賞者(誰?)の権威性に逃げがちとの報道への指摘など刺激的だ。

 

第9章 正しい情報を見抜くには

 

みならって、ファクトチェックをやってみよう。

PCR 検査を大量に実施して流行制御をおこなうかどうかについて、言い争いに近い議論は絶えない。感染症数理モデルの専門家によれば、検査をした人の割合が2割強あれば、実効再生産数が1を下回るという。(日本医師会COVID-19有識者会議|感染症数理モデルとCOVID-19)。この文脈中で、中国、台湾、ニュージーランドなどでは、これによって流行の押さえ込みに成功したという。この一文を確認しよう。

少しググれば、相反する記事が見つかる(ダイアモンドオンライン|新型コロナを封じた台湾、日本との「決定的な違い」とは)。台湾の陳時中厚生大臣は、この大量PCR検査を真っ向否定していたという。データを見ても、人口当りのPCR検査数が感染者数と関係していなそうだ。

本書のあとがきにある:

この本のタイトルにある「不都合な真実」とは、(中略)「情報を簡単に信じる」「一度信じた情報を疑わない」姿勢を、(中略)人間全員が持っている、ということです。