ジュンケイラ組織学 第5版(原書14版)
本学の組織学の授業での指定教科書。
本書の底本の初版はポルトガル語で、1971年にブラジルで刊行された。1975年に英語版が刊行され、以来世界的に使われている。評者も使ったが、当時とは内容も体裁も別物だ。「伝統は革新の連続(※)」なのだろう。原著第13版で多くの写真が更新された。約20名の翻訳者により、原著第10版から欠かさず日本語版に翻訳されきた。新しい知見を学ぶ機会を日本の学生に提供しており、良心的だ。
この第5版は原著第14版の翻訳で、原著はこれより2か月前に第15版に改訂された。現在の原著は第16版。つまり、ここで日本語版の改訂が途切れている。
※ ルーツは確かではない。記録上は、京菓子店のことばとして記載されている。ネット上には2000年以降から散見される。樋口修吉著『老舗の履歴書』(1999. 中央公論新社)がきっかけだろうか。
内容はアップデートされていながら細かな知見に流されず、説明がよく整理されている。
Junqueira's Basic Histology: Text and Atlas
顕微鏡写真の大半はHEの光顕だ。数では『Ross組織学』に及ばないが、的確な場面が選ばれているので不足を感じることは少ない。前版の改訂で多くの写真が差し替えられたせいか、今回の改訂での更新は少ないようだ。
模式図が十分にあり、説明文や顕微鏡写真の理解を助けている。レイアウトは美しく、読みやすい。
随所に「臨床応用」という短い囲み記事がある。ただし、単純すぎてCBT、国試、実際の臨床にもつながるような、しっかりした記事とはいえないものもある。
今回の改訂で加わったのが、章末問題。数は少なく、正解だけで解説はない。その前にある章の要約は前版で加わった。
全体的に第4版とのちがいは多くなく、レイアウトもほぼ同じだ。いくつかみつかった違いをみていこう。差し替わった写真が少しある。表や訳注が増えているところもある。
日本語版の電子版はない。原著にはKindle版がある。Inkling版は第12版を最後に更新されていない。
本書に準拠したバーチャルスライド画像が無料で利用できる。