永寿総合病院看護部が書いた 新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの記録

永寿総合病院看護部が書いた 新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの記録

永寿総合病院看護部が書いた 新型コロナウイルス感染症アウトブレイクの記録

髙野ひろみ, 武田聡子, 松尾晴美
1,740円(11/17 14:51時点)
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永寿総合病院(公益財団法人ライフ・エクステンション研究所 付属永寿総合病院)は、東京都台東区の地域中核病院。24の診療科に病床400床を擁し、東京都指定2次救急医療機関の1つである。日本で最初に人間ドックを始めた施設でもある。日本の多くの一般病院同様、感染症に特化した診療科はない。

 

 

2020年3〜4月に永寿総合病院で新型コロナウイルス感染症のクラスターが発生し、職員・患者含め214人の感染が判明し、入院患者43人が死亡した。ニュースに大きく取り上げられたので、覚えている人は多いだろう。

本書はその院内感染のアウトブレイクから収束まで、さらにその後のドキュメントを、対応にあたった看護科長3名の視点で描く。

もくじ

    1. 何が起こっているの? 始まりは「あれ? おかしい」
    2. 勤務調整 突然の出勤停止、病棟閉鎖をどう乗り越える?
    3. 業者の撤退! 清掃も洗濯も警備も、自分たちでやるしかない!
    4. 手探りの感染対策 「とにかく防御!」からコホーティング、感染対策の確立へ
    5. 感染対策の確立 起こさない、広げないためのルールを周知徹底!
    6. 看護科長の役割 スタッフには、患者さんのケアに集中してもらいたい!
    7. 情報共有 日ごと、時間ごとに変わる情報に対応する!
    8. 患者さんとご家族への対応とケア 退院、転院、面会制限……患者さんも大変だった!
    9. 看護スタッフのケア 風評被害と差別、出勤制限への対応

軸になるストーリーはマンガの形式で描かれる。親しみやすい絵柄だが、灰色の多いスミ版に強めのピンク特色で彩色され、緊張感がある。

難解なところはないが、看護師なら通じるような業界用語(ミキシングとか)や略称(ADL、HCUとか)が定義なしででてくる。ググりながら読もう。

 

表紙からAdobe Colorでカラーパレットを生成した。緊迫感のある配色だ

 

何かがおかしい

 

慣れないフルPPE(個人用防護具)

 

報道の過熱、風評被害、職員のメンタルストレス

 

章ごとに、文章とイラストを用いた解説がある。学習マンガの形式だ。また、感染対策の工夫から得られたパールがいくつかコラムになっている。

 

解説は文章とイラストで

 

感染対応のパールをコラムで

 

 

永寿総合病院では、アウトブレイクの収束の後、他院の院内感染のサポートに招聘されチームを送るなど貢献した。本書も、病院や施設でコロナ対応に悩む職員を勇気づける助けになるだろう。

一時は新人教育までの余力がないこととから看護師の新卒採用を見送ったそうだが、今年度は新卒・中途とも募集を再開(看護部ホームページ)している。現在は院内感染に対応した病院設計が施されている。

 

ホームページから抜粋(2021/5/17アクセス)

 

感染制御の方法論を系統的に学ぶには、ほかの成書も当たろう。