The Language of Medicine, 11e
医学用語のテキスト。前版の第10版は、Amazon.comでレビュー数 262、平均評価 4.6/5 と、好評を得ていた。実際に本書で学べるのは語学以上のものだ。
米国では、コメディカル校、Pre-med(米国の医学部はほかの学部や医学進学コースで学士をとってから入学する)、高校などに「medical language」や「medical terminology」のコースがある。オンラインで利用できるコースも少なくない。本書はそのような授業に使われるものだ。独習にも使える。
本学医学部医学科では、第2学年に通年の「医学英語」の授業がある。本書と同じストラテジーで医学用語を学んでゆく。後期の解剖学の授業にも直接役立つはずだ。
Medical language、日本人からすれば「医学英語」になるが、それを学ぶのはネイティブスピーカーにとっても外国語を学ぶのと同じらしい。たとえば、専門用語の一つ、
Oligohydramnios
がどういう意味なのか、どう発音するのか、そもそも何語なのか、普通の人には見当も付かないに違いない。しかし、用語を要素に分解して調べる練習をすると、このような用語の意味も理解できるようになるし、初見の用語でも意味を類推できるようになる。日本語の専門用語なら、漢字からおよその意味を推測できるだろう。それと同じだ。
Oligohydramnios :羊水過少症。oligo(少ない)+hydr(水)+amnios(羊膜)という3つのギリシャ語由来のパーツから成る
本書では、医学用語で使われる語の要素を学ぶことに重点が置かれる。本全体がワークブックになっていて、小さなステップを順に達成しながら、いつの間にか多くを学べるように設計されている。
図が多く、ゆったりとしたレイアウトで、見るのも楽しめる。図には実際の臨床例の写真が多く使われている。執筆に多数の臨床家や学生らが協力しているから、素材はいずれも新しい。
医学用語の概論のあとには人体の系統ごとに章分けされ、それぞれに登場する医学用語を学ぶ。各章は、解剖学・生理学に始まり、病理学から臨床医学、さらに臨床症例まで進む。医学用語を学びながら、自ずと医学全体を概観し学ぶことになる。医学・医療の内容はよくアップデートされていて、専門的にも信頼を置ける。
循環器系の章を例に、内容を紹介しよう。まず解剖学から始まる。専門の解剖学書のような詳しさはないが、簡明な美しい英文で要点が説明される。この章で学ぶべき用語は太字で示される。
次に生理学。刺激伝導系や血圧など、臨床で出会う基礎概念が説明される。
すぐあとに、語彙のまとめがある。
病理学や臨床医学が続く。
一通りの説明のあとには、略語のまとめがある。臨床現場では略語が多く使われるから、その意味を知っておかないといけない。
臨床医学の部分から、練習問題が続く。
実際の患者の体験談が各章にひとつずつあり、それまでに学んだことがさらに印象づけられる。
練習問題、語彙と発音のまとめがつづく。
最後に、章全体のまとめとして、用語の要素の復習。
このように、医学用語を軸にしながらも、単なる語学を超えて医学全体を概観してしまう。専門用語や専門的な概念がどんどん使われているから、内容自体は決して「素人向け」ではない。実際、一部だけ抜き出して読んだら、言葉がわからず難しく感じるだろう。しかし、小さなステップを順を追って本に書き込みながら学んでいくように作られているので、自習でも習得はたやすい(発音はネイティブの先生に学ぶのがよい)。将来にわたる基礎力になるだろう。
出版元のエルゼビアは本書に準拠するeラーニングのコンテンツを無料で提供している。利用にはevolveにユーザ登録し(無料)、コンテンツをカタログからみつけてリクエストする。(下のキャプチャは第10版のもの)
iOSのSafariでは動作しないようだ。Google Chromeでは動作する。
“The Language of Medicine”は1,000ページ超の大きな本だが、図表や紙面に書き込む部分が多いので、実際の内容はページ数ほどではない。しかし、日本の医学生が使うには、大きすぎるかもしれない。内容を削減したバージョンもあるので、そちらも検討しよう。
Medical Terminology: A Short Course, 7e
さらに小さなポケットブックもある。これはコメディカルの人が現場でわからない言葉に出会ったときに使うようにできている。
Medical Language Instant Translator, 6e
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