ギルバート発生生物学
Developmental Biology 10E の日本語版。
生物学や医学の各分野の教科書に、世界的にベンチマークと見なされている良書がある。細胞生物学なら『細胞の分子生物学』、生理学なら『ガイトン生理学』、内科学なら『ハリソン内科学』といったところだ。本書は、発生生物学の分野でのこのクラスの教科書だ。
原著は2〜3年ごとに改訂され、現在は第10版になっている。今回初めて日本語化された。原著の改訂に合わせてアップデートしていく体制も整えられたという。
記載されている生物はヒト・マウス・ニワトリ・ゼブラフィッシュなどの脊椎動物が大半だが、植物を含む広範な生物の発生現象が扱われている。発生生物学では、同じような遺伝子が様々な場面で登場し、事実と仮説とが交錯し、記載が煩雑・難解になりがちだ。本書ではうまく整理されている。個々の記載に出典が示されているので、疑問があれば裏付けをとることができる。図には原著論文から採られた美しい写真が豊富だ。
紙面のデザインは原著のそれを踏襲している。翻訳はこなれて読みやすく正確だ(一部に直訳調の部分もある)。
価格は原著と同じくらいで、良心的。ただし、原著より紙の厚みが薄いようだ。裏側や隣に接するページが透けてみづらいことがある。また、日本語版はソフトカバーだが、このサイズならハードカバーのほうが扱いやすい。原著はハードカバーだ。
本書の追補はウエブにあり(devbio.com)、無料で公開されている。原著ではさらに、Vade Mecum3(labs.devbio.com)にアクセスできるコードが付いている。ここには研究方法に関するビデオや画像がある。この日本語版にそのコードが付いていないのは残念だ。
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