Textbook of Histology, 4E

最新カラー 組織学』の原著の改訂版。前版が2006年だったので、10年越しの改訂だ(日本語版は2001年の第2版の翻訳)。前版までの共著者のハイアット氏がリタイアし、ガートナー氏の単著になった。また、タイトルから「Color」が外れた。

形態学としての組織学だけでなく、細胞生物学までカバーしている。序文によると、「あたらしい知見をあまねく取り入れながらも難解でないように」、「組織学の専門家を育てようとするのではなく、学生にとって将来役立つ基本を提供すべく」意図されたたようだ。

筋の部分から引用しよう。筋の分類、筋に特殊な用語、筋の発生と、広範な知識が、それぞれ数行の文章で記載され、その英文はリズム感があり美しい。

Cells of muscle are elongated and are called striated or smooth muscle, depending on the respective presence or absence of a regularly repeated arrangement of myofibrillar contractile proteins, the myofilaments.(中略)

Unique terms are often used to describe the components of muscle cells. Thus, muscle cell membrane is referred to as sarcolemma; the cytoplasm, as sarcoplasm; the smooth endoplasmic reticulum (SER), as sarcoplasmic reticulum; and, occasionally, the mitochondria, as sarcosomes.(中略)

All three muscle types are derived from mesoderm. Cardiac muscle originates in splanchnopleuric mesoderm, most smooth muscle is derived from splanchnic and somatic mesoderm, and most skeletal muscles originate from somatic mesoderm.

現在広く認められている理論はおよそ押さえられているようだ。たとえば、T細胞の分類やその成熟に関する記載は現代的だ。

一方、日本語版や原著前版のAmazonのレビューには、図が少ない、文章が難解、復習にはいいが初学者には不向きとの評が見受けられる。それも頷ける部分はあるようだ。

簡潔で密度の高い記載は、読みながら自分の知識を確認することになって心地よいが、初学者が初見でそのまま飲み込むのは難しい。そのようなときには理解を補う図があるべきと思われるが、しばしばそれを欠く。動員できる手持ちの知識が少ないと、理解はむずかしそうだ。

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T細胞の成熟が高密度な文章で説明されるが、図がない

図には光顕写真、電顕写真、模式図があるが、十分な数とはいえない。顕微鏡写真と模式図が揃ってないこともある。ラベルが足らなかったり、模式図が簡素すぎたりもする。組織学実習で便覧に使うには、不便に感じることが多くなりそうだ。

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脾臓の模式図(左ページ)。これと対比できるような光顕写真が見当たらない(右ページのは強拡)
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毛包の光顕写真。矢印がどの範囲を差しているか曖昧。その数も文章と対比するには足らない

医学科生のファーストチョイスには、本書より『Histology and Cell Biology: An Introduction to Pathology』などの方が向いているように思われる。