グレイ解剖学 原著第3版

『グレイ解剖学』が原著に続いて改訂され、第3版になった。

本書には、日本語版(eLibrary)と原著(Student Consult)の両方の電子書籍が付いてくる。いずれもiOS / Androidならアプリで、Mac / Windowsならブラウザで読める(Flashプラグインが必要)。

電子版としては他に、Kindle版、M2PLUS版もあるが、冊子体を買えば付属しているので、フォーマットにこだわりなければ他は無用。

eLibraryの利用方法

eLibraryの電子書籍は紙面のままの表示なので、RetinaディスプレイのiPadやMacならとてもきれいだ。Student Consultの電子書籍はリフロー型で、画面が小さくてもそれなりに読める。

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eLibraryとStudent Consultの両方のコードが付いてくる。eLibraryのコードの左端は数字のゼロ
eLibraryで日本語電子版を読む(権利保護のため解像度を下げてあります)
iMac 5Kで日本語電子版を読む(権利保護のため解像度を下げてあります)

どちらもマーカーを引いたり、付箋メモをつけたりできる。(手書きメモはできない。)冊子に電子版が付いていると、冊子にどんどん書き込んで電子版はまっさらにしておく、iPadに入れた電子版を実習で使って冊子をきれいに使う、英語の電子版を読んで意識高めなのアピールするなど、使い勝手が広がる。

Student Consut上の追補に、イラスト集、自習問題集、体表解剖、ケーススタディなどがある。

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Student Consultの追補

『グレイ解剖学』の初版は1858年に、医学生向けの教科書としてロンドンで出版された。グレイによる簡潔平明な解説とパーカーの原画による精緻な解剖図により、ベストセラーになった。改訂によって少しずつ詳しくなり、専門家向けのリファレンスになっていった。現在は第41版。

第39版のころに学生向けの派生物が企画された。『Gray’s Anatomy for Students』として2004年に出版され、これもベストセラーになった。本書はその第3版の日本語版。

みてすぐわかる特徴は、CGで描かれたイラストだ。立体的、清廉で、実際の形状がすこし理想化して描かれていて、図を見ただけで理解しやすい。

これらの図がゆったりと誌面にレイアウトされる。このレイアウトは巧妙に設計されていて、本文とそれに対応する図とがすぐ近くに(多くの場合同じ見開き内に)配置される。しかも、原著、日本語版ともほぼ同じレイアウトになっている。図を探してページ送りせずに済む。また、書き込む余白が多いから、勉強しやすい。

序文には、文脈を通じて学習することが解剖学では重要、とある。基礎医学から臨床医学までの全体の流れのなかで解剖学の学習をとらえよう、ということだ。実際に、本書では臨床的な疾患や病態が解剖学から論じられ、体表解剖や画像解剖にも重点が置かれている。

全体の構成は局所解剖になっていて、巻頭に少しだけ「総論」がある。局所解剖の部分はおよそ、解剖学実習の一般的な順番になっている(本学で使っている『グラント解剖学実習』との違いは上肢の順だけ)。

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総論()に続いて局所解剖(マゼンタ

総論には画像診断学の概説がある。著者の一人は放射線科医だ。

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ここでは「局所解剖」の部分から胸部の章を例にしよう。「概観」から始り、続く詳細な説明でのポイントが示されている。

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局所解剖の各章は概観から始まる。
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注意して学ぶことが「重要ポイント」としてまとめられている。この紙面でも、本文の説明と図とがすぐ隣にレイアウトされている。

続いて局所解剖が詳しく説明される。概観で示された重要ポイントが繰り返しでてくる。

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概略に続いて、局所解剖の詳しい説明がある
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臨床に関連する事項は緑の地の囲み記事になっている。ここでも、すぐ近くに必要な図がある。

「体表解剖」が続く。OSCEの身体診察のときにこの知識を実地に使うことになるだろう。

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体表解剖

最後に「臨床症例」がある。

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臨床症例

電話帳のように厚い本だが、図が多く、ゆったりレイアウトされているので、厚さから想像するほど内容は多くない。できるだけ早い機会に通し読むのを勧める。

もし授業の始まる前の余裕のあるときに本書で予習するなら、まず総論を読み、局所解剖各章の概略を拾い読むとよい。序文でアドバイスされているとおり、臨床症例を先に読むのもよい。解剖学の何が将来どう役立つのか、先に知っておくと知識の定着がよいはずだ。

この版で追加された特徴的な図が、脳神経のまとめの図だ。頭頸部の実習の時に、それぞれが少しずつ部分的に剖出されてくるので、全体の知識のまとめがつかなくなりがちだ。そんなときに役立つだろう。ただし、のどの部分の余白が狭すぎて、見開きの時に図の中央にある肝心の神経の根元が見えない。(原著も同様だった。)改善してほしい。

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脳神経のまとめの図。のどの部分が見えにくい。