臨床のための解剖学 第2版

米国のAmazonで最も売れている解剖学教科書の日本語版。

医学生向けの解剖学の教科書では最大だ。本書は著者らの意図がはっきりと実体になっている。

タイトル通り、臨床医学の事柄も、解剖学のコンテキストで語れるようなことはおよそ含めてしまっている(専門的に過ぎることは別にして)。

臨床事項は「ブルーボックス」とよばれる囲み記事にまとめられて、臨床の多岐にわたって記載されている。無味乾燥な解剖学ではないので、読むのは楽しい。また、画像解剖や体表解剖にも重点が置かれている。学部生のうちに本書になじんでおけば、臨床に進んでからも役立つだろう(いそがしくて読み返す暇はないかもしれないが)。

IMG_3208
臨床事項がまとめられた「ブルーボックス」。今回の改訂で、従来ボックス記事で随所にあったものが各章一つにまとめられた。
IMG_3211
体表解剖と表。体表の写真に解剖図が投影されている。骨格筋のスペックは表にまとめられている。

もう一つの意図は、およそ文章で記述したことはすべて図示しようとしたことだ。今回の改訂では、メディカルイラスト制作会社と組んで、多数ある図のほとんどが統一的なタッチのCGで描き下ろされた。

従来までは『グラント解剖学図譜』から引用されていて、タッチに不統一感があり、古くささがあったが、それらは置き換えられた。いくつか残っている図も、トレースやレタッチされて新しいタッチに合わされている。『グレイ解剖学』や『プロメテウス解剖学 コア アトラス』によって設定された解剖図のスタンダードにやっとなったといえる。

IMG_3209
図のほとんどは新作のCG
IMG_3210
『グラント解剖学図譜』から採られた図はレタッチされ、他と統一感のあるタッチにされている

最初の総論の章で系統解剖学が取り扱われ、続く章で局所解剖が記載される。冊子としては『グレイ解剖学』と同じくらいの体積だが、それと比べて情報が多い。図は1ページに複数レイアウトされることが多い。比較的小さめだが、読むのには十分だ。紙面の余白は比較的少なく、字も沢山あるが、息苦しくなるほどではない。文章とそれに対応する図は、すぐ近くにレイアウトされている。色分けやアイコンが多用され、学びやすいようになっている。

取り上げられている項目が多いので、要点を掴みにくい面はあるかもしれない。要約をまとめた囲みが随所にあるが、文字通りの要約で、『グレイ解剖学』の概説にあるような、ここだけは押さえておけというようなポイントを示しているものではない。しかし授業をよく聞けば多分大丈夫だ。

索引が情報量に比べて弱い。調べ物で何かを探しているとき、多数あるなかで1箇所くらいしか見つからない(たとえば「胸骨角」)。

本書に欠けているのは、ケーススタディや練習問題だ。原著には、thePoint上のコンテンツへのアクセス権が付属していて、ケーススタディと練習問題がそこにあるらしい。この日本語版にはそれが付属していない。

本書の著者の一人は、『グラント解剖学図譜』や『グラント解剖学実習』の著者でもあり、これらの原著は同じ出版社が出版している。揃いで使うと用語やコンセプトの不一致が少なくて、連携がよいかもしれない。

本書から要点を抽出した教科書に『ムーア臨床解剖学』があり、こちらを選びたい学生も多いかもしれないが、原著の改訂から遅れている。