新組織学 (Qシリーズ)

挿図がすべて模式図とスケッチだけの、組織学のテキスト。顕微鏡写真は載っていない。「Qシリーズ」の他書と同様、本書はコンパクトに仕立てられている。指定教科書が厚すぎて困っていたら、この位置についてみてもよい。

紙面は比較的大きなフォントで余白をとってレイアウトされている。大部分は見開きでワンテーマになっている。一部ページの表裏をまたいでいたり、ページの途中でテーマが切り替わっていることもある。ここは、利便性を優先して、ページ数が多少増えても見開きにしてほしかったところだ。

記述がわかりやすい。要点からディテールまで、構造的に、トップダウンで記載されている。

各テーマの冒頭にまず、その要点が2つ、短文でまとめられている。要約の場合もあるし、短文にまとめきれないようなことは、学習目標の形で示されることもある。

本文は主に箇条書きになっている。重要語は赤い太字で、重要な部分はマーカーで明示されていて、学習参考書のようだ。文章量は少ないが、項目の羅列にはなっておらず、文脈があるので読んで理解しやすい。

要点とそれに続く箇条書き

図がたくさんある。ほとんどは、Adobe Illustratorで描いたらしい線画。

総論の細胞の部分から
各論の肝臓の部分から
各論のリンパ系の部分から

顕微鏡写真が一切無いことが、本書の特徴でもあるし、注意点でもある。

筆者自身、まえがきで、組織学の修得には顕微鏡実習が重要なこと、本書がそこで参照する便に合わせて書かれたことを述べている。

このブログの組織学の教科書を検討した記事では、選択の要点の一つに

  • 高品位な光学顕微鏡写真が多数あること

を挙げている。光学顕微鏡写真でみる組織像を読み解く力が、CBTや国試、さらには臨床に進んでも(専門によるけれども)肝要だからだ。本書の紙面内で理解する分には読んでわかりやすいが、習得のターゲットはその外にある。本書で勉強するとしたら、これを忘れないようにしたい。

記載の正しさや新しさについては、多少の注意は必要かもしれない。

  • T細胞の分類にサプレッサーT細胞が記載されている(1990年代にTregと差し替わった 1, 2
  • ハッサル小体の機能が不明と記載されている(2005年に報告あり3
  • 糸球体の基底板を作る細胞が何かについて、文章内で矛盾がある。