イラスト解剖学 第9版

『イラスト解剖学』、通称『イラ解』が改訂されてカラーになった。改訂ごとに厚くなっていたが、今回もページ数が4.5%増えた。

「ゆるい」タッチのイラストで解剖学に関連するいろいろなトピックが説明される。イラストの印象に反して、内容はしっかりした臨床解剖学だ。

全体が系統解剖学に沿っている。実習の予習に読むには面倒があるけれども、それぞれのトピックが1ページごとにまとまっているので、拾い読みできる。『グレイ』の通読に飽きたときにぱらぱらとめくってみるのもいい。

試験に出そうなポイントを手っ取り早くレビューするのにも使える。臨床との関連が多く紹介されているので、ハードコアな形態学に辟易したときにモチベーションを保つのにもよい。

イラストは、前版までの線画に彩色を施したもの。もともとわかりやすい模式図だったが、色分けによってよりわかりやすくなった。文章の部分も組み版が組み換えられ、読みやすくなった。

イラストがゆるいとはいっても、ある程度写実的に描かれたものもある。人体は巧妙に構造が組まれているので、ゆるいばかりでは解剖図として破綻するのだ。

彩色されたイラスト。よりわかりやすくなった。冠動脈のイラストは比較的写実的。ゆるいデッサンでは破綻するのだろう
単純レントゲンのレベルまでなら、画像解剖学もカバーされている
腕神経叢関連の臨床症状がまとめられたイラスト。橈骨神経麻痺は2017年の国試にも出題された

巻末には、人名の付いた医学用語のまとめと、語呂のまとめがある。どちらも記憶の助けになるだろう。

人名の入った用語のまとめ。臨床用語ではこういうのが多い
語呂のまとめ。エッチなのが多い

本書には、肉眼解剖学だけでなく、発生学と神経解剖学も含まれる。個別に教科書を買うほどでもなさそうなときに、とりあえず本書をみてみるのもよいだろう。

胎児循環
神経堤

イラストに書き込まれた手書き文字に一部誤字があるのは、前版のまま

「顎」の左下がちがう

電子版は付属しない。冊子体はかなり厚くなったので、残念だ。M2PLUSの電子版が別にある

ゆるいイラストをつかった医学関係のテキストは海外には少ないし、『イラ解』ほどコンプリートなものは存在しない。『マンガでわかる』シリーズのように英訳して、クールジャパンとして世界に打って出てもよいのではないだろうか。