in situハイブリダイゼーションで染色した胚のClearing法

Clearingとは、顕微鏡観察のために標本を透明にする処理のこと。標本と屈折率の近い溶媒に標本を浸漬し、界面での光の散乱を低減させる。in situハイブリダイゼーションの場合、未反応の基質を溶かして染色のコントラストを高める効果もある。

グリセリン

Clearing効果は弱いが水性で扱いやすい。PBSなどで50〜100%弱にして用いる。浸透圧で収縮しないよう、数段階にわけて濃度を上げる。胚が沈むのを見計らって次の段階の液に移す。

Murray’s solution

ベンジルアルコール(benzyl alcohol)と安息香酸ベンジル(benzyl benzoate)の1:2混合液。卵黄の屈折率に近い屈折率(1.56)を持つためにclearing効果が強く、胚はほとんど透明になる。欠点は、NBT/BCIPの青い染色を少しずつ溶かすこと、プラスチックを侵すこと、揮発臭があること。水溶液中の胚を次のように置換する
  1. 100%メタノール 10分間×2
  2. Murray’s solutionに移す

テトラヒドロナフタレン(tetrahydronaphtalene)

Murray’s solutionと同等のclearing効果があるが、青い染色の融解は少ない。
水溶液中の胚を次のように置換する:
  1. 100%メタノール 5分間
  2. イソプロパノール 10分間
  3. テトラヒドロナフタレン 10分間
青い染色をゆっくりと溶かすので、長期保存には向かない。いったんPCR用のミネラルオイルに移して保存しておき、観察時にテトラヒドロナフタレンに戻す