プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 第3版

プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 第3版

プロメテウス解剖学アトラス 胸部/腹部・骨盤部 第3版

坂井 建雄
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『プロメテウス解剖学アトラス』(全3巻)の第2巻「胸部/腹部・骨盤部」の日本語版が改訂され第3版になった。第1巻「解剖学総論/運動器系」と第3巻「頭頸部/神経解剖」は先に改訂されていたから、これで版が揃ったことになる。

 

帯のキャッチフレーズも揃った。上から第2巻、第3巻、第1巻

 

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版

坂井 建雄
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プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第3版

プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第3版

坂井 建雄
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いずれも底本はドイツ語原著の第4版だ。英語版も同じく原著第4版を底本とした第3版が、3巻揃って3月に出版予定になっている。原著は2018年に第5版になった。

日本語版を3巻合わせると、ページ数は1,692ページ。紙面の総面積を計算すると、日本語で読める現役の解剖学書としては最大になる。アトラスとして図が豊富であるのに加えて解説文や表が多く、教科書のように読んで学べる。原著のタイトルが『LernAtlas Anatomie(解剖学学習アトラス)』とあるとおり。

他の「プロメテウス」シリーズ同様、「胸部/腹部・骨盤部」もメディカルイラストレーターのWesker氏とVoll氏による精緻な解剖図が特徴だ。Wesker氏は運動器系、Voll氏は内臓系を多く担当しているので、この第2巻にはVoll氏の作品が多い。学習のための本ではあるけれども、「美しい図を眺めては悦に入る」というのが正しいような気さえする。印象が強く残るので、そうしているうちにも学べるはずだ。

 

『グレイ解剖学』の紙面の総面積78.5m2を1として表示

 

序文によると、この第3版(原著第4版)の改訂の目標は:

  1. 現代のカリキュラムに合わせること
  2. 臨床でも役立つような解剖学を提供すること
  3. 臨床にいってからも頼れる教科書にすること

だという。今回の改訂ではページ数は第2版から10ページ増えただけだ。内容の骨子も大きくは変わらず、図の番号も第2版とほぼ同じ。誤りの訂正やブラッシュアップが主のようだ。血液の項目が追加されたのがめだつ位だ。前版のまま愛用していたら、慌てて買い直すことはないかもしれない。図の数や順番に大きな変更がないので、買い換えても違和感なく使える。

 

第2巻「胸部/腹部・骨盤部」第3版と第2版

 

序文:3つの目標

 

第3版で追加された血液の項目

 

本書は全体の大枠が局所解剖に沿って章立てされている。それぞれの章は、概説につづいて系統別に詳しい解説がある。

胸部の章を少しみてみよう。リアリスティックなイラストを中心に、模式図や表が適宜使われ、それぞれに詳しい説明文がある。項目が論理的に配置されているので順に読んでいってもいいし、必要なところを拾い読みしてもよい。

 

胸部の概説から、縦隔

 

胸部の概説から、神経系

臨床事項が随所に加わり、診療の基礎になる解剖学が提供されている。心臓の聴診や心電図など、生理学でも学ぶことではあるけれど、解説を支える解剖図の正しさが心強い(生理学の教科書では模式図だけのことが多い)。

 

心臓の弁と聴診

 

刺激伝導系と心電図

 

第3巻とは異なり、この巻では医療画像が多く含まれる。エックス線写真、エコー、CT、MRI、アンジオグラフィーなど、臨床でよく使われるものだ。解剖実習をしているうちに、本書を参照して役立てたい。臨床に進んでしまうと紙面や画面上でしか学べないので、立体の把握に苦労するものだ。

 

胸部レントゲン検査でみる心臓

 

心エコー:プローブの向きと断層像

 

心臓のMRI検査と断面

 

冠動脈の区分と心臓カテーテル検査

 

心臓の3DCT

 

『プロメテウス解剖学アトラス』は大きな本なので、電子版があったらより使い勝手いいと思う。ドイツ語原著や英語版にはPDF版、EPUB版、Kindle版がある。出版社の医学書院には「医学書院eテキスト」という電子教科書のサービスがあるし、医書.jpに多数のコンテンツを提供してもいる。環境は揃っていると思うのだが。