英単語集:受験用から医家用まで
 
            大学受験英単語集から医家向け英単語集まで、あつめてみた。
大学受験英単語集
大学受験英単語集について、戦後から現在までによく使われた英単語集をみてみよう。いずれも現在でも入手可能だ。
時代による流行の変遷がある。入試でどの英単語集を使ったかを聞くと、年代がわかろうというものだ。
「豆単」— 挫折のアルファベット順
『英語基本単語集』(旺文社)は1953年刊で、戦後の受験英語を支えたともいえる。コンパクトで、「まめたん(豆単)」と呼ばれた。語数は約3,800語+熟語1,000語。アルファベット順で、小さな英語辞典だった。英単語がページの外半分、訳語が内半分にレイアウトされているので、半分ずつ隠しながら覚えることができた。たいていの受験生は途中で挫折したかもしれない。
熟語集もある。
「でる単」「しけ単」— 救済の頻出順
1967年に登場したのが、青春出版社の『試験に出る英単語』。関東では「でる単」、関西では「しけ単」と呼ばれていた。著者の森一郎氏が、全国の全入試問題を分析し、英単語の出題頻度を測定し、頻度順に約1,800語に絞った。訳語も頻出のだけだ。現代でいえばビッグデータ分析。
「豆単」の「AからZまでとにかく覚えていく」から、「よく出る単語を先に押さえる」への転換だ。つまり、途中で挫折しても、そこまでの頻出単語は覚えておけた。これが1990年代まで長く使われた。
熟語集、語源など、シリーズ化された。
「速単」— スランプ打開の読解重視
1994年、Z会の『速読英単語』が登場した。略して「速単(そくたん)」。
英単語を覚えただけでは、英文は大して読めるようにならず、英語の成績は期待したほど上がらない。長文の文脈の中で自然に英単語を習得するのがよいのはわかっていたが、コンセプトに留まっていてた。それを英単語集として実装したのは画期的だった。ちょうど入試英語が「読解重視」にシフトしていた時期にもマッチしていて、進学校で多く推奨された。
レベル別、英熟語集、英文法などシリーズ化された。
「ターゲット」— 全方位の後出しじゃんけん
旺文社は1970年代まで「豆単」を引っ張ってきたが、「でる単」以降は市場を奪われていた。そこで「でる単」と同じ手法で頻度順に制作されたのが「ターゲット」シリーズである。「でる単」は著者個人による頻度データに基づいていたが、時代を経て旧くなってきていた。そこで社をかけてデータを収集して制作した単語集が「ターゲット」シリーズ。
「ターゲット1900」「ターゲット1400」「ターゲット1200」など、志望校に応じて語彙数を変えた単語集を作った。「速単」に対抗した「英文で覚える 英単語ターゲットR」もある。さらに、アプリ版もリリースされた。現代の標準的単語帳として抜け目なく商品構成が設計されているといえる。
医学部受験用の英単語集
大学入試の問題制作は、多くの場合に各学部の教員から選ばれた委員会が担うはず。医学系の専門家が日常使う英語は医学系・医療系なわけで、医学部の入試では医学関係に出題が偏りがちだ。NatureのNews and Viewsだったり、BMJのエッセイだったりがネタに使われることもある。一方で、一般の受験英単語集には人体・医学・医療に関する単語がとてもすくなくて、医学部受験には不足がちだ。
そんなわけで、医学部受験者向けの英単語集がある。「ターゲット」など一般の英単語集との差分なので、語彙数は数百語だ。ただし医学系の英単語だけでなく、それが使われる医学的な背景までわかるようになっている。
『医歯薬系入試によくでる英単語600』は駿台予備校の英語教員が書いた。文系のヒトらしいが、生物学や医学医療の背景も説明が整っている。群馬大医学部医学科入試の過去問が3本採用されている。最高難度のもある。
医家むけの英単語集
本学の解剖学の授業では、英語の専門用語を学ぶ。参考のビデオは音声・字幕とも英語だし、英文の出題もある。他の授業でも、多かれ少なかれ英語は使われる。申し訳程度ながら国試にも英語は出る(なかにはUSMLEの準備をするひともいる)。
その状態で臨床に行くと、日本語の話せない患者さんがやってきたりする。旅行者であったり、在住の人であったりだ。職場検診の仕事をすると、外国人労働者が少なくない。そこで会話に困る。ポケトークやChatGPTでは追いつかない。英語を話せた方が診療がスムーズだし、文化の違いとかも知っておきたい。





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