小説みたいに楽しく読める睡眠医学講義

小説みたいに楽しく読める睡眠医学講義

小説みたいに楽しく読める睡眠医学講義

内田直
3,773円(05/27 10:29時点)
発売日: 2025/03/20
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「睡眠」への関心は高い。睡眠の質をよくするという乳酸菌飲料は品薄になるし、睡眠によいマットレスやまくらがバラエティー番組によくでてくる。MLBで活躍する日本人選手の睡眠がニュースになり、睡眠時無呼吸症候群がタレントの話の掴みになったりもする。

そういうわけで、「小説みたいに楽しく読める」シリーズの6冊目は睡眠医学。『解剖学講義』(432ページ)を超えてついに最大となった(464ページ)。

 

『睡眠医学講義』は6冊目、最新刊

 

存在感あり

 

筆者は40年間にわたり睡眠を研究してきたオーソリティーで精神科医。本書はその集大成でもあるらしい。目次をみれば、およそ睡眠に関する項目が分子から疾患まで網羅されていることがわかる。

目次(クリックして詳細をみる)
  • はじめに
  • この本の読み方
  • 第1部 睡眠医学の基礎
    • 第1章 睡眠とは
    • 第2章 睡眠研究の歴史
    • 第3章 睡眠の神経メカニズム
    • 第4章 生物時計とサーカディアンリズム
    • 第5章 正常の睡眠:睡眠構築と睡眠生理学2
    • 第6章 動物の睡眠
    • 第7章 睡眠時間と睡眠負債
    • 第8章 発達と老化による睡眠の変化
    • 第9章 睡眠と記憶
    • 第10章 夢と睡眠
    • 第11章 運動と睡眠
  • 第2部 臨床睡眠医学
    • 第12章 睡眠障害の分類
    • 第13章 睡眠ポリグラフィー検査
    • 第14章 その他の睡眠医学検査法
    • 第15章 不眠症
    • 第16章 中枢性過眠症
    • 第17章 睡眠関連呼吸障害
    • 第18章 概日リズム睡眠・覚醒障害
    • 第19章 睡眠時随伴症
    • 第20章 睡眠関連運動障害
    • 第21章 睡眠環境
    • 第22章 睡眠と社会
    • 第23章 睡眠専門資格について
  • おわりに
  • 睡眠の疑問やお悩み 早見表
  • 文献
  • 索引

 

想定された読者は、まず医療関係者、つぎに学生。そして睡眠に悩む・関心がある一般の読者。

医学生なら、試験で寝不足だったり、進級が心配で眠れなかったり、部活の疲労が取れなかったり、動画を見すぎて朝になっていたり、睡眠の悩みは尽きない。試験直前、きちんと眠れば記憶の定着になると知っていても、一夜漬けではそういうわけにもいかない。本書を読んで睡眠のマネージメントをしよう(まあタイムマネージメントが先なわけだが)。

そういう睡眠の悩みや関心のあるひとでも、本を頭から読んでいたら知りたい情報にたどり着く前にねてしまうだろう。そういうときは、巻末付録の「睡眠の疑問やお悩み 早見表」をまずチェックしよう。

 

早見表

 

本は、おおまかに基礎編と臨床編に分かれている。

かたりくちは落ちついていて、「小説みたい」ではないけれどもむだがなく、りくつが腑に落ちる。医療関係者や医学生であれば、内容に難しいことはないだろう。臨床家向けの内容(つまり、略語が続々出てくる説明)もあるが、自分に関係なければ読みとばせばよい。この業界でない場合には、読むのがゆっくりになりそうなところはあるかもしれない。

地の文で書かれているところは、医学書なりにエビデンスに裏付けされた、または筆者がエビデンスを確認した部分。エビデンスの信頼性の高低に応じて「である」「と思う」など表現を使い分けているらしい。文献への参照もあり、安心して読める。

 

エビデンスレベルに基づいて記述

 

本文から、アスリートと睡眠

 

筆者の臨床家としての経験に基づいてはいてもエビデンスが十分でない話題は、「Tips by Dr.すなお」というコラム記事になっている。たとえば、サプリメントだったり、古くからの治療薬だったりすると、ランダム化比較試験をするまでもなく使われていることはあるのだ(心不全の利尿薬のように)。そういうときに、その筋のオーソリティーのアドバイスは有用だ。

筆者の長年の研究でのむかしばなしはコラム記事になっている。

ふてほど」な昭和的なところはちょっとある。ヒトが「進化の頂点」で系統樹のトップにいたり、変化を強調するあまり棒グラフのY軸の原点がゼロでなかったりする。でも話の本筋はきちんと立派なのでだいじょうぶ。まあ、アップデートしたほうがいいとは思うけれど。

 

Tips by Dr.すなお

 

コラム

 

装幀はこれまでの「小説みたいに楽しく読める」シリーズと同様で楽しめる。

帯を外すと、本の内容から集めたいろいろなイラストが現れる。題字の飾り枠には、昼夜のひつじがあしらわれている。

 

帯の下のイラスト

 

飾り枠のひつじ

 

睡眠といえばひつじなので、ひつじ社員がいろいろなところで働いている。

 

魚の睡眠を調べるひつじ社員

 

レム睡眠行動障害の例示で頭をぶつけるひつじ社員

 

もう働きたくないひつじ社員

 

ちなみに、「小説みたいに楽しく読める」シリーズには特製しおりのうちどれかがランダムに付いてくる。先の『栄養学講義』のしおりが今回の『睡眠医学講義』から追加されたらしい。がしかし、引きがよくなくて、『免疫学講義』がかぶってしまった。

5種類をコンプするまでに買わなければならない冊数の期待値は、11.4冊…

 

特製しおり付き

 

紙面写真の紹介記事への掲載につき羊土社様より許諾いただきました(2025年5月23日)