WEEK10 Day3 発生学講義 泌尿生殖器2
ポイント
◇生殖器の分化
男性:セルトリ細胞がAMHを出し、中腎傍管(ミュラー管)が退縮、その後生殖細胞とともに精巣索を形成。ライディッヒ細胞はテストステロンを出して、中腎管から精巣上体、精管、精嚢、射精管が分化。テストステロン(T)からジヒドロテストステロン(DHT)を合成して尿生殖洞から外生殖器の分化を促進。
女性:エストロゲンにより中腎管(ウォルフ管)が退縮。中腎傍管から、子宮、卵管、膣上部が分化する。
陰唇陰嚢隆起から伸びる下生殖靭帯から導帯ができて、生殖腺の下降を行う点は男女共通。
男性では下降時に、筋膜を押してくる。腹横筋だけは押してこない。ので、4層が3層になる、と覚えればいい。腹膜は内側だが、一緒に連れてくる。このとき、鞘状突起(腹膜)が閉じずに鼠径管に腸管が入り込むと間接鼠径ヘルニア(外鼠径ヘルニア)で、ヘッセルバッハ三角から鼠径管を壊して腸管が入り込む直接鼠径ヘルニア(内鼠径ヘルニア)とは病態が異なる(※内外は膨らむ場所の違い)
女性では、左右の中腎傍管が融合して1つになり子宮になる。癒合に問題があると重複子宮(左右に小さい子宮がある)など。下端は尿生殖洞から形成される洞膣球と癒合。したがって、膣の上部は中胚葉由来、下部は内胚葉由来。
外生殖器も基本は女性形。DHTが男性形を誘導、エストロゲンが女性形の分化を促進。生殖結節(生殖茎)、陰唇陰嚢隆起、尿生殖ヒダから何が分化するかは覚える(※プリントの表に訂正あり)。
男性の尿道海綿体は尿生殖ヒダが閉じて形成される(※上記訂正部分)。尿道の遠位端である外尿道口は亀頭から内部への陥入で形成される。尿生殖ヒダの形成や閉じ方が十分でないと尿道下裂。亀頭の陥入部が前下方に引っ張られる発生異常も尿道下裂に含む。したがって、いずれにせよ尿生殖ヒダの分化、形成に異常があるが、詳しい原因は不明。陰茎が屈曲しているケースが多い。立位で排尿できない場合が多く、治療対象。
真性半陰陽:精巣と卵巣の両方が存在する。原因不明。環境要因が大きいらしい。
仮性半陰陽について。シグナル伝達の異常を論理的に考えることができるようになることは発生学修得における目標の一つ。(※下記以外の原因もあります)
・男性仮性半陰陽はとりあえず2種類。セルトリ細胞の異常とライディッヒ細胞の異常を考えてみる。
セルトリ細胞関連シグナルに異常がある場合、AMHが出ない(または少ない)ため、退縮しないミュラー管から子宮や卵管ができる(※卵巣はできない)ミュラー管遺残症候群。DHTはあるので、外生殖器は男性形になる。
ライディッヒ細胞関連シグナルに異常がある場合、①T合成に異常があれば、精巣は存在しても、精管、精嚢、射精管、外生殖器の全てが低形成になる、②TからDHTを合成する5α還元酵素や③尿生殖洞(例えばアンドロゲン受容体)に異常があれば、精巣、精管、精嚢、射精管はできるが、外生殖器が低形成になる。5α還元酵素欠損が原因として一番多いと考えられている。TとDHTはともにアンドロゲン受容体に結合可能だがDHTの方が親和性が高い。したがって②は、思春期に精巣でTの合成量が増えてアンドロゲン受容体と結合することで外生殖器の分化が進むことがある。
・女性仮性半陰陽について。基本形は女性にも関わらず、精巣も存在しないため、男性様分化の原因を生殖腺以外に求めることになる。副腎皮質の異常(21水酸化酵素の欠損など)の一つ副腎過形成症。副腎の発生に関してはp18も参照。コルチゾール濃度が低下することで、視床下部ー下垂体前葉ー副腎皮質(ー視床下部へ戻る)のネガティブフィードバックループが壊れて、ACTHは上がり、副腎が過形成になる。アンドロゲン(Tを含む)の合成が促進されて、副腎由来のTが増える。5α還元酵素(※注:ライディッヒ細胞特異的ではなく、皮膚などの末梢組織にも多いので女性にもある)により、TからDHTが合成される。DHTが男性外生殖器様の分化を促進する。ただし、アルドステロンやコルチゾールなどの合成低下がむしろ顕在化するので内分泌学上治療が必要な指定難病。
おまけ
今年のトップ画像5枚は全部、骨盤部の解剖学・発生学のオマージュでデザインして、時間短縮のためAIに色塗り手伝ってもらいました。神経(ドレスを着た女性)が一番よくデザインできたお気に入りです。いつか、研究論文で表紙とりたいです(一ノ瀬)。
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