WEEK8 Day2 消化管の取り出し、後腹膜、横隔膜
消化管の取り出し
消化管をもとのままみられるのは今日が最後だから、あらためて全体を概観して復習しよう。
切るべきものを確認する。剥離で剥がれるものを確認する(二次的な後腹膜臓器:上行結腸、下行結腸)。
トライツ靱帯(十二指腸堤筋)を目視する。平滑筋を含む線維束でしかないので、意識していないと剥離の時にこわしてしまう。
たこ糸を用意してあるので、腸管を切る位置に2箇所結紮して、その間を切る。
腸管の内容物は専用の容器へ。
肝臓も切り出してよく観察する。腫瘍などの病変や大きな変形がなければ、肝区域を剖出してみよう。異変があったらスライスするなどしてCT課題用に準備してみよう。
肝臓を腹腔から切り離すには、『グラント解剖学実習』p102のステップ7まで済ませてから、総胆管(胆嚢管の合流後)、固有肝動脈(右胃動脈の分岐後)、肝門脈(左右に別れる手前)を切ればよい。ついでに、三つ組みをよくみて、それを囲むグリソン鞘を確認しよう。
肝区域ごとの脈管の剖出
オプション。肝腫瘍などを診るために肝臓をスライスするなら、肝区域はやらなくてよい。
肝臓の状況によってやらないことにしたとしても、カントリー線がどこになるか、実際の肝臓で確認するのはマスト。
役割分担して効率的に。3本の肝静脈が肝内を木の根のように拡がっているのをみて、CTでの見え方と対応づけておきたい。
腹部CTやエコーの講義、解剖実習の前説、解剖実習での腹部エコーのデモンストレーションで、頻繁に出てきたのが肝区域。肝臓の部分切除や部分移植では、肝区域ごとの切離する。肝動脈塞栓術でも、腫瘍を狙うには区域の理解が元になる。
肝区域はまず、肝内の3本の静脈(右肝静脈・中肝静脈・左肝静脈)で縦にわける。そして門脈(冠動脈と胆管も伴走する)の3本の枝がそれらを2分する。
右肝静脈・中肝静脈・左肝静脈は、下大静脈に斜め下から入るから、CTの1スライスではそれぞれの断面しか見えない。実物を立体で見たほうがわかりやすい。造影CTを立体構築すれば肝静脈の全体を剖出できるが、実物を先に見ておかないと立体構築ができているかわからない。
方法は次の通り(共有ドライブにビデオあり)
- 肝臓の上面から前面にかけてメスで縁を1センチくらい残して縁取るように浅く切れ目を入れる
- 切れ目の中を1センチくらいの賽の目に浅く切れ目を入れる
- 何かへら状のもの(ピンセットの柄、刃を外したメスの柄、先の丸いハサミなど)で、賽の目を一つずつはぎ取る。
- 肝実質をこそぎ取りながら、脈管を残していく
- 水道で細かな実質を洗い落とし、脈管あらわにする
- 下面についても同様に処理する
- 肝静脈と門脈にラベルを入れる
こつは、辺縁は実質をとらずに残すこと。脈管がぶらぶらになると、元の位置がわからなくなり、同定できなくなる。
腎筋膜
後腹膜の中で腎臓を取り囲む腎筋膜(Gerota筋膜)をみておこう。腎筋膜は、深筋膜のような丈夫な膜ではなく、後腹膜の脂肪の中にある線維の膜状の集まりである。注意してみないと見過ごす。
腎臓と尿管
殻割りして皮質髄質、腎杯と腎盂をみていく。
尿管の狭窄部をチェック。
副腎
かたちをみよう。CTでのみえかたと対応付けよう。
栄養動脈を3系統みつけよう。
精巣動脈または卵巣動脈
腹大動脈からの分岐をみつけて、発生学上の意義を思い出そう。
精巣または卵巣からの癌のリンパ行性転移は、この動脈に沿って大動脈前リンパ節に至る。
腰神経叢のスケッチ
大腰筋を鈍的にこわしながら腰神経叢をあらわにしていく。片側を先行させ、そちらを参照して反対側を上手に仕上げる。変異がいろいろある。
- 枝をまずみつけて印を付ける。鼠径管を通る神経は、鼠径管の剖出も思い出して同定する
- 大腰筋をピンセットとハサミで鈍的にこわしていく
- 前枝や交感神経幹まで露わになったらスケッチ
横隔膜
横隔膜を通る穴とその高さを確認しよう。横隔神経の通る穴の左右の違いをみよう。
弓状靱帯とそれぞれが跨ぐものをみよう。