ジュンケイラ組織学 第6版〈原著第16版〉
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本学の組織学の授業での指定教科書。
本書の底本の初版はポルトガル語で、1971年にブラジルで刊行された。1975年に英語版が刊行され、以来世界的に使われている。約20名の翻訳者により、原著第10版から日本語版に翻訳されきた。新しい知見を学ぶ機会が日本の学生に提供されている。
この第6版は原著第16版の翻訳である。原著第15版の翻訳はスキップされた。日本語版第5版のときに図版の多くが刷新されたが、それ以降の大きな差違はほとんどない。原著の方では、第16版のときにMc Grow Hill社のAccess Medicine上の電子版へのアクセス権が冊子体に付与されたことが、大きな違いのようだ。原著は現在第17版になっている。
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監訳者による序文
免疫関係の章をみてみよう。章の初めに、登場してくる臓器や組織の概要が図で示される。話がややこしくなる前に体のどこの話なのか、概略をつかめるのはよいことだ。
形態学だけでなく、細胞生物学的な話から章がはじまる。アップデートされていながら細かすぎるディテールに流されず、説明がよく整理されている。免疫系はアップデートの頻繁な分野だけれども、本書の説明文はよくキャッチアップされている。現在の知見と相違のあるところは丁寧に訳注が入っているので、心強い。
ところどころに、「臨床応用」という紫色の地の囲み記事がある。地の文の流れに関連した臨床のトピックを端的に解説したもの。
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章で登場する臓器・組織の概要、自然免疫と獲得免疫
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抗原提示(「臨床応用」は移植のはなし)
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胸腺の役割「T細胞の学校」
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原文の不足や不具合は、訳者が訳注で補足している
1つの事柄が、光学顕微鏡写真、電子顕微鏡写真、イラストを使って説明される。脾臓の成り立ちなど、組織学実習で光学顕微鏡を覗いただけでは何が何だか、形の意義がサッパリわからないことは少なくない。ここに電子顕微鏡写真や模式図があれば、組織の読み取りができるようになってくるだろう。
図版の数は、『Ross組織学』には及ばないけれども、ヘマトキシリンエオジン染色が多く、場面が的確なので、顕微鏡実習で参照するには十分だ。
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適宜にイラストがある
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脾臓の類洞の成り立ちが、光学顕微鏡写真、電子顕微鏡写真、イラストで説明される
章の終わりには、「キーポイント」が箇条書きでまとめられる。それに続いて、選択問題が章のまとめとしてある。
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キーポイントとまとめ問題
日本語版の電子版は、医書.jp、M3、Kindle、など各プラットフォームにある。
本書に準拠したバーチャルスライド画像が無料で利用できる。
紙面の写真の使用について丸善出版様より快諾いただきました(2024/5/1)。
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