胸部 画像診断の勘ドコロNEO
画像診断学のテキスト「勘ドコロNEO」シリーズの1冊。医学生や研修医の学習用というよりは、画像診断を専門にしようとする人に役立つだろう。
この本は胸部のうち、肺と縦隔が主になる。他に「心臓・大血管」と、「乳房」の本が別にある。
「勘ドコロNEO」シリーズの他の巻には医書jpとM3から電子版もでているが、「胸部」は冊子体のみ。
なぜ「NEO」なのかは序文にもあるけれども、「NEO」のまえに2014年の「新」、そのまえに2006年の「(無印)」があった。枕詞がインフレを起こしそうだが、次はどうなるんだろう? 「-1.0」?
モダリティーでいうと、この「胸部」編に取り上げられているのは、単純エックス線、CT、PET。MRIとエコーはない。まあ、肺と縦隔だとあまり使われない。
はじめの3つの章で、胸部の単純X線、CT、PETの技術や読影の基本が概説される。
基本といっても、X線の吸収とは、アイソトープの核種とは、というような素朴な基本は越えている。プロがわきまえておくべき、業務遂行のベースになる知識だ。単純X線ならたとえばグリッドの詳細、CTなら再構成の条件など。確かに、こうした撮影条件を根拠を以て選んでいけるかどうかは、プロの矜持だろう。
新しい技術にも言及される。とはいえ、本書にはAI診断までは含まれていない。まあ、本書のような10年くらい読まれる本としては、他書や他誌に譲る案件ではある。しかし、新しい技術によって従来の手法(つまり単純X線)が淘汰されていくことへの展望は踏まえている。
ところどころに、「勘ドコロ」「ちょっと追加」という囲み記事がある。「勘ドコロ」を先に読んで、よく知らなかったり説明に困りそうなところを本文で読めば、時間節約になる。
「ちょっと追加」には、現実は本にあるようにはいかないよね、とか、基本だけど忘れがちだよね、というようなことが書いてあって、つい目に入る位置にある。実際、右肺中葉と左肺舌区の関係は解剖でも説明するけど、試験に出すと答えられなかったりだ。
ほかにも、「必読」「MEMO」「用語アラカルト」など、スキマというスキマに囲みがある。
画像と解剖や組織と対応づけて読影が根拠付けされている。
実際、解剖実習でCTをみてる学生がなやむのが、「スリガラス」とか「浸潤影」とか「気管支壁肥厚」とかの「業界用語」だ。「どこがどうなるとスリガラスになるの?」、「浸潤ってどこに何がどのように?」とか、「実際みると厚くないけど、何が肥厚してるっていうの?」とかなるんである。
コロナ後なので、COVID-19の肺炎の読影もある。いまはだいぶ少なくなったけれども、デルタ株まではこのように気づかないうちに重症化していった症例が話題になった。
この記事への紙面の写真の使用について、メジカルビュー社様より許諾をいただきました。(2024年2月1日)
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