令和医療手技図譜 新型コロナウイルス編
森皆ねじ子先生の昨年末の冬コミの新刊、『令和医療手技図譜 新型コロナウイルス編』をいただいた。1冊は、本学医学図書館に寄贈された。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック以来、折々に発表されていた作品や医療誌の特集、描き下ろしを、時系列でまとめたものである。
- 第1章 2020年4月 物資不足(2023.5.5 コピー誌)
- 第2章 2020年6月 街も人も動き出す(2023.5.5 コピー誌)
- 第3章 2020年10月 熱と検査とPCR(描き下ろし)
- 第4章 2021年4月 ワクチン開始(エキスパートナース2021年6月号・7月号)
- 第5章 2021年8月 自宅療養のやり方(2021.12.31 コピー誌・エキスパートナース2022年5月号付録)
- 第6章 2021年12月 三回目・四回目のワクチン(エキスパートナース2022年9月号)
- 第7章 2022年8月 抗原検査キット(描き下ろし)
- 第8章 そもそもコロナってなんだよ(描き下ろし)
辛かったことは忘れがちだ。温故知新というけれど、COVID-19が「故」になるのは早かった。ワクチン接種や治療費へのサポートから国は手を引いてしまった。しかし新型コロナウイルスはSARSのように消えてなくなったわけではなく、いまもそこにあって変異を続けている。新興感染症(人類にとって新しい感染症)や再興感染症(思い出した頃に再流行する感染症)は、この20年で10回発生している。オリンピックの倍の頻度だ。
次のために、ここ数年のCOVID-19が実際どんな感じだったのか、記録に残しておくことが大切だ。データはもちろん、ドタバタやスッタモンダも。後者にはやはり、物語やマンガである。
*NHKのまとめページもおさえておきたい。
話は2020年の第1波から始まる。
1月に厚労省が武漢での未知の肺炎について注意喚起をした。日本国民をチャーター便で武漢から帰国させた。2月にはダイアモンドプリンセス号が横浜に入港した。小中の休校要請。北海道知事が緊急事態宣言。
3月には志村けんさんがコロナで亡くなった。世界中の都市から人影が消えて、4月にはローリングストーンズの「Living In A Ghost Town」が世界同時リリースされた。5月にはブルーインパルスが東京上空を飛行した。
市場からマスクも手袋も消毒薬も消えた。
6月には、最初の非常事態宣言が明けた。しかし、このあとも明けては暮れがずっと続くとは、ふつうの多くの人々は思ってなかった。
「GO TO」やらオリンピックやらレジ袋有料化やら、奇異な政策が交錯した。
本学はというと、2020年4月までに、急ごしらえでオンライン授業の仕組みがつくられた。オンライン会議サービスにはZoomが採用された。このときZoomの時間制限などが教育機関向けに一時的に緩和された。また、それまであまり使われずにいたLSMが使われるようになった。後期には流行が落ち着いていたので、解剖学実習は対面で実施できた。(2021〜2023年度も、解剖学実習は対面でできた。)
翌年4月には、ワクチン接種が始まった。1年余りでワクチンができたのはとても早かったけれども、早く順番がこないかとやきもきした。まず医療関係者と高リスク群から。大規模接種センターでは自衛隊が貢献した。
これまでのワクチンにはなかった、超低温保存、要希釈、振盪不可、筋注などの重要事項があって、再確認やら練習やらをした。
群馬県でも大規模接種センターが設置され、本学附属病院の医師・看護師などもサポートした。評者も、ねじ子先生のエキスパートナースの特集を、県から渡されたマニュアルとともに熟読して参加した。
波ごとに流行時の患者数が増大し、病院や療養施設には収容しきれず、自宅療養になるひとが増えた。ふつうの人の想像する「重症」が、分類上だと中等症Ⅰだったりずいぶん解離していて、話題になった。
パンデミックに対処しながらも、病態が解明され、さらに研究が続いている。いくつか治療薬も開発された。
一時期は店頭から消えたN95、サージカルマスク、アルコール系消毒薬、体温計、パルスオキシメーターなど、今はふつうの価格で買える。
ワクチンも変異に対応して開発が続いている。日本では最大7回接種まで進んだところで、無料から有料になろうとしている。
自治体などに配布されたディープフリーザーが不要になり、廃棄されたり、譲渡されたりしている。当研究室も譲渡に応募した。(捨てるなんてもったいない! SDGsって?)
COVID-19の後遺症については、まだ研究の余地が多い。エンデミック化し人々が生涯でなんども感染するようになったとき、どうなるだろうか?
COVID-19に取り組んだひとたちのまとめがいくつか出版されている。合わせて読もう。
著書の書評に紙面の写真を使用することについて、森皆ねじ子先生より包括的な許諾をいただきました(2024年1月24日)
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