医学用語の漢字
医学用語には、難しい漢字や馴染みのない漢字がよく使われる。誤字やかながきはかっこわるいから、漢字書き取りの練習をしよう。とはいえ、どういう字が正しいのか、筆順をどうしたらいいのか、迷うことはある。小中学校で書き取りについてうるさくいわれた経験があるかもしれない。答案の採点でも、悩みの少なくないところだ。
いちど常用漢字の考え方に立ち返ろう。文化庁のサイトにまとめがある。
まず、常用漢字表をみよう。冒頭に文字の表記についての考え方がある。簡単にいうと、文字の骨格さえ同じなら、点画やはね払いなどの書き方がちがうくらいは同じとみなそう、ということ。許容されるべき例には、嗅や頰など解剖学用語に使われる文字もある。
小中学校の現場で点画やはね払いまでうるさくいわれるのを憂いて、常用漢字表の字体・字形に関する指針: 文化審議会国語分科会報告(平成28年2月29日) が発表された。
常用漢字の考え方では、文字のかたちの違いを、字種・字体・字形の3つのレベルに分ける(下図)。字種が違うと意味字体が違ってしまう。しかし、文字の骨格が同じなら同じ文字とみなされる。字体の違いは、歴史上変化してきたかたちの違いで、昔のかたち(旧字体)か最近よく使われるかたち(通用字体)かの違いで、同じ文字。字形の違いは、手書きか活字か、あるいは活字でもデザインの違いかで、同じ文字。
常用漢字表ではこれらを調査した上で、多く使われていた字体を明朝体で例示してある。字体を統一しようとしたり矯正しようとはしていない。そのため、臭に点がなく、嗅に点があったりする。臭はイヌの鼻の象形なので、もと点があったのが省略されたもの、嗅は省略が進んでなかったもの。つまりどちらの文字の点があってもなくてもよい。
一つ一つの文字について上の文書から探すのは面倒だが、索引がウエブ化されている。
医学用語の表記に特有の議論については、上の書籍がくわしい。胸腔が「きょうこう」ではなく「きょうくう」と読まれるようになったいきさつなど、古典に当たって調べられている。
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