当直コールの対応、おまかせください! / 内科診療ことはじめ

医療関係の情報量は膨大だ。それを上手にまとめて活用すること、そのためのスキルを身につけることが大切だ。そんなことを伺わせる本を2冊。

 

先生、病棟で急変です!当直コールの対応、おまかせください!

先生、病棟で急変です!当直コールの対応、おまかせください!

藤野 貴久
3,960円(12/25 04:10時点)
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筆者の病院では、初期研修1年目(J1)から内科当直があり、多くの症例を経験するという。もちろん上級医が診療のバックアップに付いているし、チーフレジデント(CR)が1対1の症例ふり返りによって教育をサポートする。

本書はケーススタディー形式の学習書だ。症例の対応の様子や、当直明けのふり返りをシュミレーションしながら、急変対応の全般を学べるようになっている。救急外来ではなく当直コールなので、病態はある程度絞られる。

全体が大きく3つにわかれている。緊急性によるトリアージだ。

  • 第1章 病棟へダッシュ!
    • SpO2低下、血圧低下、意識障害、頻脈・徐脈、胸痛
  • 第2章 小走りですぐ病棟へ!
    • 腹痛、発熱、痙攣、悪心・嘔吐
  • 第3章 歩いて病棟へ!
    • 不眠、せん妄、血糖異常、その他(事故抜去・皮疹・転倒など)

本書を読むことの利益は、コール対応を学ぶこと自体もあるけれど、臨床を学ぶ学び方を知れることも大きい。全体、あるいはパートごとでも、通しで流れを読んでいくのがいい。マネをして実践してみよう。

血圧低下のところをみてみよう。最初の見開きに大きな表があり、タイムスケールで対応がまとめられている。タイムスケールは、電話を受けたとき、現着(現場に到着)したとき、最初の対応、その後の対応。対応の中身は、何を考えるか、何を指示するか、診察と検査、カルテチェックやオーダー。

 

最初の見開きの大きな表

 

次のページから、研修医とチーフレジデントとのふり返りが始まる。チーフレジデントはまず褒める、研修医は学びたい(そして寝たい)という姿勢だ。

 

症例のふり返り

 

コラム記事も見逃せない。コラムというと何か高尚で趣味的な文章がありがちだが、本書のは実際的だ。たとえば、「医学知識のまとめ方」というコラム。タイトルだけみると、何かこう、学習方法的な、東大生の母的な、いいのかわるいのか判別しがたい話かもという気がしてくるけれども、実際には、情報を一カ所に集めよう、そのためにNotionを使ってるけどいい感じだよ、という話。

 

コラム

 

章末には、引用文献と参考文献のリストがある。それぞれに一言紹介がある。

 

文献のリスト

 

イラストは、羊土社教科書編集部の「後輩」さん。

https://twitter.com/yodosha_text/status/1623853798753189888?s=61&t=2v8Deum7RenVu-kN2CFJ2Q

本学図書館の蔵書は、表紙のイラストのドヤ顔のちょうど真上にバーコードがある。自動貸出機の読み取り位置が決まっているのでずらせないのだ。

 

顔の真上にバーコードが(^_^;)

 

研修医のための内科診療ことはじめ 救急・病棟リファレンス

研修医のための内科診療ことはじめ 救急・病棟リファレンス

杉田 陽一郎
7,920円(12/25 04:10時点)
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研修医のための内科のまとめの本である。判型はA5だが900ページ近くあり、重さは1.2㎏。『グレイ解剖学 第4版』が1.9㎏なので、0.6〈重量グレイ〉になる。

本書は単著である。内科の本を一人で書くなど想像もできないが、2年で書き上げたという(*)。その間も新しい情報は追加されるし、もちろんコロナもあったろう。監修者によると、筆者は「巨星」だという。卒後5年目には本書の内容のあらましを体現し、人柄もよい。PowerPoint使いで知識のまとめ方が上手。知識をうまくまとめられると、いろいろ上達が早いのだな。

*『ハリソン内科学 第1版』も2年ほどで完成されているが、ハリソン以下数名のチームと多数の校閲者で作られた

臓器ごとの9章立てになっている。各章のタイトルに「パート」とあるのは、それぞれを完全に記述したのではなく「まとめ」なのだということだろうか。

  1. 感染症パート
  2. 呼吸器パート
  3. 循環器パート
  4. 消化器パート
  5. 神経パート
  6. 腎臓パート
  7. 内分泌代謝パート
  8. 血液パート
  9. 筋骨格・免疫パート

各章の共通したフォーマットはなく、それぞれ内容に応じて話が構成されている。概ね、章の初めに病態生理や解剖があり、各疾患や治療、治療薬、こぼれ話が続くという感じだ。

 

最初は病態生理から

 

イラストは筆者自身によるものだろうか。PowerPoint使いとあるので、確かにそれっぽい。見どころが的確でわかりやすいイラストだ。そういえば、全体にPowerPointのスライドを書籍化した感がある。

腹痛の文脈で精巣関連の病気もでてくる。精巣の痛覚の髄節の関係で関連痛が腹部に出るためだ。このあたり、実際的だ。

解剖学、発生学、進化にもとづいた解説もあり、筆者のまとめのスペクトルの広さがわかる。

 

腸管の発生と解剖にもとづいた関連痛の解説

 

四肢の神経支配を進化をさかのぼって理解する

 

処方についての洞察も的確だ。コロナワクチンで使い方を再確認したアセトアミノフェンについて、処方量が不足がちというポイントがおさえられている。

ちなみにアセトアミノフェン静注液(アセリオ静注液1000mgバッグ)で過量投与についての注意喚起がでている。㎎とmLの取り違えだ。

 

 

上の2冊には電子版もある。iPadに入れておこう。

  • 先生、病棟で急変です!当直コールの対応、おまかせください!
  • 研修医のための内科診療ことはじめ 救急・病棟リファレンス
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