組織細胞生物学(原書第5版)
『組織細胞生物学』が改訂され、原著第5版の日本語版になった。ポイントは2つ:
- 電子版(日本語・英語)が付属
- 図版や内容が刷新された(手直し程度ではなく)
組織学の教科書の選択の目安として、4点をあげた:
- 高品位な光学顕微鏡写真が多数あること
- 文章や写真だけではわかりにくい局面で適宜模式図があること
- 形態を意義付ける機能面、分子面の記述がしっかりしていること
- 新しい知見がフォローされていること
本書はこれにかなう数点の教科書のうちのひとつといえる。本書は組織学と細胞生物とが合わせて記載されており、単なる形態だけでなくその機能的意義まで学ぶことができる。また、病理学的な内容まで含んでいて、このあとの学年で学ぶであろう病理学の基礎として役立つだろう。
外皮系と、免疫系を少し、みてみよう。
ミニマムな学習目標が「キーワード」として示される。概説から始まる。短文で、構造の機能的意義と臨床での意味づけが概観されている。
本文中、緑色の地の部分は、組織学の基本的な項目を説明している。図が豊富にあり、それらを参照しながら本文を読むようにできている。図自体にも説明書きがたくさんあり、図を追っていくだけでも概略を理解できる。VARKでビジュアルのスコアが高いひとなら、特に学びやすいだろう。
訳文は、日本語としてとても読みやすい、というほどではないにしろ、キチンと翻訳されていて、読んで理解するのに大丈夫なレベル。「皮膚は、臨床における理学的検査において特に重要」は、「患者さんの身体を調べて所見を取るときに、皮膚はとても大切」と脳内変換して理解できる —「Physical」の訳語に「身体の」ではなく「理学的」を充てる医系の習慣を、基礎医学を学ぶ段階で知っていればだけれども。
光学顕微鏡写真が大きくレイアウトされており、組織学実習でも役に立つ。適宜、電子顕微鏡写真もあり、光学顕微鏡では解像力が不足する構造もみてとれる。写真の読み取りを助ける模式図も的確だ。模式図には細胞生物学的な項目も描き込まれている。
毛包の写真や図が多く、構造がみてとれるテキストは少ない。本書の図は十分で、これ以上の詳しい話し(内根鞘の内訳など)は知らないでも大丈夫。それよりも、分子機構や幹細胞の方を学べた方がいい。美容皮膚科でも使われる項目である。
この版では前の版で間違いのあった「バルジ」の矢印が正され、分子機構が加わった。
ちなみに、バルジをターゲットにするレーザー脱毛があるが、大丈夫なのだろうか?
皮膚の臨床関連では、創傷治癒や代表的な疾患が取り上げられている。
章末にまとめがある。階層的な概念図と箇条書きになっている。
免疫系はアップデートが多い。
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