プロメテウス解剖学 コア アトラス 第4版
『プロメテウス解剖学 コア アトラス』がこの10月末に改訂され、第4版になった。
本学の解剖学履修生の多くが利用しているアトラスであり、解剖学の授業が10月からスタートしていた折、改訂を待っていたところだ。
オビにある「さらなる高みへ」という自信は何か、確認しよう。
今回の改訂でページ数は増えていないけれども(770ページ→768ページ)、内容は増えている。何が増えたかというと、解剖学的・臨床的な説明の文章と模式図だ。
『コア アトラス』は、ドイツで出版された『Thieme Atlas of Anatomy』全3巻を米国の著者らが1巻に再編したものだ。原本には解剖図に加えていろいろな説明があって、教科書のように解剖学を学ぶことができた。最初の『コア アトラス』はこれらが省かれていたが、この第4版ではそれが加わった。
構成が米国の解剖学の授業のニーズに沿っている。『グレイ解剖学』と『グラント 解剖学実習』のコンパニオンとして使いやすい。実際、上肢の章の位置が異なるほかは、『グラント解剖学実習』と同じ並びになっている。
いくつかの項目について、図の改善や追加がなされている。鼡径管の層構造は実際わかりやすくなった。もっとも、『グレイ解剖学アトラス』の見開きの大きな図のほうがより印象的だけれども。
『プロメテウス』の解剖図は、コンピュータ上で描かれた精細なイラストレーションだ。骨筋・神経系を主にWesker氏が、内臓系を主にVoll氏が描いている。微妙な違いはあるけれどもタッチがよく調整されている。レイヤーを多用して描かれているらしく、同じ骨格系の図に筋や内臓などが肉付けされて、解剖の深さのシリーズになっているのもある。
精細なイラストに模式図・表・文章で解説が加えられている。教科書で読むような項目もカバーされている。文章ではふわっと曖昧になっているようなディテールも、イラストなら一目瞭然だ。ビジュアルな素材から学ぶのが好きならよりたのしめる。
臨床に関連する事項が囲み記事にまとめられている。
画像解剖学も含む。断面のイラストとCTやMRIが対応づけられている。解剖学の授業で参考にするには十分だろう。
本書には、神経解剖学も含まれる。脳実習には十分だろうし、神経科学を学ぶときの基礎にもなるだろう。
実習書、教科書、アトラスと揃えるときに、イラストによるアトラスとして本書はオススメだ。この場合、実習室用には写真のアトラスを班員でワリカンにして買おう。
オビにあるとおり、オールインワンだけれども、ひとつだけ欠けているのは電子版。いまの学生の9割がiPadを使っているのだがなあ。冊子体に付属していたら机の上でも実習台の傍らでも使えるので、本当に一択になるのだが。
2022年12月、医書.jp版が発売された。
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