診察と手技がみえる vol. 1, 2
『病気がみえる』シリーズの姉妹巻。『病気がみえる』と同様に、写真・イラストが豊富に使われていて、ビジュアルに臨床手技を理解できるようになっている。カバーされている内容と本の仕様に比べて低価格なのも同様だ。
第1巻は、共用試験の臨床実習前OSCEに対応している。
写真、図表が多く使われていて、手技をビジュアルに理解できる。写真は撮り下ろし、画像はオリジナルだ。
ビジュアルに偏りすぎて説明がなく、実際にどうやればいいのか知らないとできなそうなページもある。
実臨床とは距離のある部分もありそうだ。医療面接の項目で紹介されている「見本」は、「胃痛」を主訴とし、精神的ストレスが背景にありそうな患者。性別と年齢は記載されてない(アイコンからすると高齢男性らしいが、リストラが心配と言ってるので定年前か)。ストレスと胃痛と聞いて十二指腸潰瘍と診断して治療頑張りましょうって、短絡的でないだろうか。
うつの身体症状を気にかけつつ、ピロリ、採血、心電図や内視鏡や画像を考えないだろうか。リストラされそうで夜も眠れないひとが(なんか話しやすそうな先生だなあ)と呑気な感想を持つのも変な気がする。
本書の内容をコンパクトにまとめた小冊子が付属する。OSCE当日のチェックや、臨床実習に持っていくのによさそうだ。心音のCDも付属している。ただ、最近の学生にCDを読めるパソコンを持っているのは少ないと思われる。改定時には配信に変更したらよい。
本書の出版後にBLSガイドラインが改定された。本文と合わなくなっているので、それを補足するプリントが付属している。
第2巻は、針や管を刺したり、外科の手技をやったり、カルテへの記載。第1巻と合わせて初期研修までカバーしている。救急蘇生法については、第1巻が一次救命(BLS)まで、第2巻が二次救命(ALS)になる。
コロナ以前の刊行なので、三角筋注射の刺入位置は肩峰の3横指下。厚労省の動画や、CDCの動画もそうなっている一方で、より安全とされる刺入位置の報告もある。また、アナフィラキシーの診断や対応について、あっさりとしか記載されていない。次の改訂では、これらも対応されることと期待する。
巻末にバイト募集がある。医学生や研修前後の医師をライターやイラストレーターとして制作し、専門家の監修を付けるのが、『病みえ』のスタイルだ。医療面接辺りの浮ついた感じは、こんな体制のせいもあるのかも。
類書には医療マンガもある。著者は経験のある医師なので、リアリティーがある。
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