Grant’s Atlas of Anatomy, 15E
Grant's Atlas of Anatomy (Lippincott Connect)
1943年から続く『Grant’s Atlas of Anatomy』 が改訂され、第15版になった。3つの点で、前版から大きく変更されている。
- 章の順番が『Grant’s Dissector』と統一された
- 前版から進められていたイラストのリマスター作業が完了した
- Lippincott Connectの電子版が付属された
その他にも、細かな改変が施されているようだ。
本書の特徴は5つある。
- 実物を写実的に描いて制作された解剖図。正確性に秀でている
- 模式図が適宜使われている
- 体表の写真、医用画像も使われている
- 臨床で重要になるポイントもカバーされている
- 電子版付属
Wolters Kluwer社の教科書には、北米版と、インターナショナル版がある。インターナショナル版は表紙が簡略化され少し安価だが、中身は同じ。北米版にはペーパーバックとハードカバーがある。大きくて厚い本なので、ペーパーバックを本棚に立てておくと、へにゃっと曲がってしまうことがある。すこし割高でもよければ、ハードカバーの方が曲がりにくい。
現在の日本語版第7版は原著第14版の翻訳であり、改訂が待たれる。その際には、Kindleや医書.jpでの電子版の販売もお願いしたい。教科書と違ってアトラスには文章が少ない。原著の方が割安で内容が新しく、電子版も付属しているから、英語に抵抗がなければ原著を使うのが良い。
この版から、章立てが『Grant’s Dissector』と統一された。予習や実習で参照するときに使いやすくなった。
第14版からコンピュータグラフィックスを使った図版のレタッチと彩色が進められていたが、この第15版でそれが完了した。
『Grant’s Atlas of Anatomy』の初版の図のほとんどは、Dorothy Foster Chubb氏が1年間で仕上げたもの。実際の解剖標本を木炭画で細密に描いた。その後、Nancy Joy氏、Elizabeth Blackstock氏などのイラストレーターが図版制作を継続した。比類なく精密なこれらのイラストは現在の版でも使われている。
初期の木炭画は、写真で複製して彩色する方法で、後にカラー化された。近年では原図の損傷が無視できなくなったため、改めて原図の修復とアーカイブ化がなされた。デジタル技術で原図がレタッチされ、統一されたカラーコードに沿ってコンピュータグラフィックスで改めて彩色された。それがこの第15版の図版である。
初期の木炭画以降も、多くのイラストレーターが図版を追加してきた。最近の図版には、原図をコンピュータグラフィックスでトレースしたり、初めからコンピュータグラフィックスで制作したイラストも使われている。ただし、初期の木炭画の迫力には及ばないようだ。
いずれにしても、オリジナルの図版の価値をリスペクトしている姿勢が好ましい。関係者が、図版に対する審美眼を欠いていると、解剖学アトラスは劣化していくから。
体表解剖や画像解剖も多く取り入れられていて、卒後も実用になる。図のテーマや解説文には臨床で役立つポイントがふんだんにある。
第15版から、電子書籍へのアクセスコードが付属するようになった。冊子体と同じ内容に加えて、Acland’s Video Atlas of Human Anatomyからとられた動画もある。動画は古いものらしく、画質は良くない。
同じコードを使って、thePointのコンテンツにもアクセスできる(有効期間2年間)。あるのは動画。
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