こういうときはこうする! 感染症クリスタルエビデンス 感染対策・予防編
新型コロナウイルス感染症の流行で、エビデンスに基づいて考え行動し表現することの大切さが、すこし広まったのではないだろうか。ポップアートにさえも。
富岳くん、計算する pic.twitter.com/eyCC0bLf06
— ○イジー (@daisycutter7) July 6, 2021
現代の医療は「根拠に基づく医療」(Evidence-Based Medicine; EBM)だ。それによってガイドラインや標準治療が制定・提案されている。ただしそれらは盲目的に従えばいいマニュアルではなく、エビデンスを理解して実際の状況に適応させることが求められる。
本書では、感染制御のいろいろな局面についてエビデンスが要約され、それに基づいてエキスパートによる対応が提案される。すこしみてみよう。
アルコール噴霧による環境消毒の件。コロナ以降、怪しい噴霧が流行った。
本書の出版は2019年でコロナ以前だが、その時点のエビデンスでも、アルコール噴霧は環境消毒には効果が低いことがわかっていた。接触感染を防ぐためには、消毒液が汚染面に一定時間停滞する必要がある。そのためにはアルコールタオルによる清拭がより効果的である。また、アルコール噴霧ではアルコール吸引による毒性、引火の危険性もある。これらにもとづいて、エキスパートは「院内の環境消毒にはアルコール噴霧は不可」とする。
手術室に入る前には手指消毒を十分にする必要がある。従来はブラシでゴシゴシこする方法がとられていたが、現在は消毒液を塗るだけの方法が主流になってきている。この変化もエビデンスに基づいている。
エビデンスは日々追加され、それに基づく標準も更新される。たとえばマスク装着がインフルエンザ対策に有効かどうか。コロナ以降、マスクの感染防止効果のエビデンスが急速に蓄積された。マスクを含めたコロナ対策で、インフルエンザ感染の発生は激減し皆無になった(コロナはそれでもゼロにはならないが)。本書もいずれ書き換えられるだろう。
続刊もある。
なお、エビデンスは、医療業界の外まで無遠慮に外挿してしまうと、「エビデンスの棒」になってしまうおそれもある。深慮してリアリストになろう。
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