2020年度解剖学アンケート
2020年度の解剖学の授業の総括のため、履修生全員にアンケート調査を実施した。その結果をまとめた。
調査詳細
- 調査方法:Googleフォームによる全学認証付きウエブフォーム
- 調査期間:2020年12月3日〜26日
- 調査対象:2020年度肉眼解剖学履修生
- 任意・必須の別:必須
- 設問形式:リッカートスケール(設問に同意する程度を、同意(5)・やや同意(4)・どちらともいえない(3)・やや不同意(2)・不同意(1)の5段階で答える)の設問、いくつかの選択肢から選択する設問、自由回答の設問の3種類
- 回答率:98%(ウエブフォームの不具合によりCT関連・Zoom関連の設問は60%;研究目的使用の許諾を得たもの)
集計
- リッカートスケールの設問の集計はリッカートプロット(中央の値を横軸の中央に揃えたバーグラフ;肯定的な回答の割合が多いほどバー全体が右に寄る)で表示
- 選択肢の設問はバーグラフや円グラフで表示
- 自由回答の設問は、Wordcloudを作成(User Local)
解剖班の班分け
昨年度までに続いて、2020年度も組み合わせ最適化によって解剖班の班分けを実施した。新型コロナのパンデミックによって今年度前期はリモート授業だけだったため、一般入学生は進級後、編入生は入学以来、顔合わせの機会がなかった。履修生相互の好みに基づいて最適化するしくみのため、よい班分けが難しい状況だったが、結果は例年通りに好ましいものだった。
なお、今年度の組み合わせ最適化では、例年制限していた条件を解除ないし緩和した(女子4名の班を許可、履修回数による区分けを解除、編入生複数の班は抑制のみ)。
自由回答:解剖班について
講義と実習
今年度の講義はすべてZoomを使ったリモート(一部録画済みのムービーの配布)で行った。授業開始前のアンケートではリモート講義にネガティブな意見が見られ(班分けのアンケートでの自由記載の設問から)、困難が危惧された。教員自体も初めてのことなので、事前の練習をしていても不慣れはあった。しかし、フタを開けてみると、解剖学の授業では対面よりもリモート講義のほうが好調だった。
Zoomのログからリモート講義への参加状況を推定すると、毎回9割以上の出席が得られていた。履修生のカメラとマイクはオフになっていたので実際の聴講状況を講師が推し量るは難しかったが、調査によれば3/4の履修生が講義時間内の6割以上を視聴していた。対面の授業でも集中している聴講生は6割程度のことは少なくないので、良好な結果と思われる。録画ムービーもよく活用されていた。自由記載では、来年度以降もリモート講義を求める意見が少なからずあった。
医学生にとっては、大学入試対策に始まり、CBTや国試対策にもネット講座が広く用いられている。大学の講義でもリモートの利点が見直されることになろう。
解剖実習は概ね例年通りに実施できたが、時間に余裕を持たせるために、一部の課題を削減するなどした。CTに基づいて解剖を考察する課題が省略されたが、CTやエコーの理解は浅くなった恐れはある。
自由回答:Zoom講義について
自由回答:CT、エコー、iPadについて
自由回答:授業全体について
Grant’s Dissection Videos
解剖実習を効率的に進めるため、また、感染拡大時に解剖実習の代用として学ぶために、今年度はGrant’s Dissection Videosを採用した。大半の履修生がよく活用してくれた。
アクセスに難しさがあったこと、ナレーションと字幕が英語だけしかないことは、評価を下げた。アクセスできないことについてはブログに解決法を掲載したが、細かなサポートは難しかった。日本語化については営業上の理由から困難なようだ。医学英語を学ぶチャンスと考えたほうが早いだろう。
自由回答:Grant’s Dissection Videosについて
IT
ブログ、共有ドライブ、カレンダー、成績通知メールは、いずれもきわめて好評だった。今年度はリモート講義や自己学習が増えていたので、ITが特に役立ったようだ。
自由回答:ITについて
試験
試験の分量や難易度は概ね適正だったようだが、試験によるばらつきが大きかったとの感想が少なくなかった。試験を含め多くの評価項目を設けているので、難易度にばらつきがあっても最終的な成績は平坦化される(大数の法則)。困難な試験が学びを刺激することもある。
来年度からは試験が期末の1回だけになることが予定されている。それについては、従来通りの3回を希望する意見がほとんどだった。
教科書・参考書
解剖学の主な教科書・参考書について、評価と使用率をまとめた。教科書では『グレイ解剖学』、アトラスでは『プロメテウス解剖学 コア アトラス』、『グレイ解剖学アトラス』、『解剖学カラーアトラス』の評価が高かった。『グラント 解剖学実習』に関して、誤植や誤訳が目立つとの指摘が少なからずあった。
自由回答:教科書について
教員
教員に関する評価をまとめた。各教員について高評価を得られた。
自由回答:教員について
情報端末の所有状況
携帯情報端末とパソコンについて、所有状況をまとめた。スマホではiPhoneのシェアが大きい。iPadの所有率が年々増加している。パソコンについては、MacとWindowsのシェアが拮抗している。新入生への配布物にパソコン購入のガイドを配布した効果があっただろうか(ガイドではHorosを使えるMacをより推奨している)。
学習状況
授業期間が感染状況の落ち着いていた時期と重なったために、課外活動やアルバイトをしていた履修生は例年と同程度にいた。
試験準備は、数日前から1.5週前から始めていた履修生が多かった。日常の学習時間は0.5から2時間が多かった(平均1.7時間)。試験前の学習時間にはばらつきが多く、数時間から半日に及んでいた(平均8.5時間)。
学習状況について、素点をアウトカムとして重回帰で関与をしらべた。平時の学習時間が素点に有意に関係していた。
Estimate | Std. Error | t value | Pr(>|t|) | |
---|---|---|---|---|
(Intercept) | 0.7050 | 0.0438 | 16.08 | <2e-16 |
GDV視聴数 | 0.0036 | 0.0343 | 0.10 | 0.917 |
Zoom集中割合 | -0.0139 | 0.0399 | -0.35 | 0.729 |
部活動とクラブ回数 | 0.0078 | 0.0070 | 1.11 | 0.270 |
アルバイト回数 | -0.0049 | 0.0065 | -0.75 | 0.455 |
試験対策日数 | -0.0015 | 0.0021 | -0.70 | 0.488 |
平時学習時間 | 0.0153 | 0.0065 | 2.35 | 0.022 |
試験前学習時間 | 0.0051 | 0.0030 | 1.72 | 0.090 |
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