プロメテウス解剖学アトラス 頭頸部/神経解剖 第3版
『プロメテウス解剖学アトラス』の第3巻「頭頸部/神経解剖」の日本語版が改訂され第3版になった。日本語版とドイツ版原著で版番号がずれていて、日本語第3版は原著第4版の翻訳である。原著は昨年第5版になった。ややこしいので日本語版の版番号は「原著第4版」という表記にして、原著と合わせてほしいところだ。
日本語版のうち、第3版への改訂が残っているのは第2巻「胸部/腹部・骨盤部」だけになった。それでも日本語版の改訂は英語版より早い。
「プロメテウス」シリーズの他巻同様、「頭頸部/神経解剖」もメディカルイラストレーターのWesker氏とVoll氏による精緻な解剖図が特徴だ。3巻合わせたボリュームは『プロメテウス解剖学エッセンシャルテキスト』の3倍、『プロメテウス解剖学 コア アトラス 第3版』の2倍弱になり、日本語で読める現役の解剖学書としては最大だ。『Gray’s Anatomy: The Anatomical Basis of Clinical Practice, 41e』がちょうど匹敵するボリュームになる。アトラスとして図が豊富であるのに加えて、解説文や表が多く教科書のように読んで学べる。
ページ数は第2版からほとんど変化ないが、前版以来のフィードバックが多く反映されているようだ。頭蓋の個々の骨の図、開口した口腔の図などが新規に作成されている。
本書は「頭頸部の肉眼解剖」、「神経解剖」、「中枢神経系:用語集・要約」の3部構成になっている。
頭頸部
『プロメテウス』の図は、緻密に作図が計画されていて、コンピュータ上で複数のレイヤーを組み合わせて1つの図が制作される。同じ骨のレイヤーに筋、脈管、神経、臓器などをいろいろに重ねあわせ、ときに彩色でハイライトが付けられている。これが書籍全体の論理性に貢献している。同じレイヤーから多数の図が効率的に制作されるので、他のアトラスではみかけないような図も少なくない。
随所に臨床医学を解剖学から根拠づける事項が記載される。
医用画像はほとんど取り上げられないが、詳細な断面図がたくさんある。組織学や発生学も少しある。組織学の図は写真ではなくイラスト。そもそも本書にはほとんど写真が使われていない。
神経解剖
神経解剖の部分はより教科書的で、細密画だけでなく、説明文、表、模式図も多い。画像解剖学はほとんどないが、細密画による断面図があり医用画像からの参照に有用だ。
ここでも臨床との関連が解剖図で示される。
中枢神経系:用語集・要約
神経解剖学の主な用語、経路のまとめが最後にある。経路のまとめの図はいずれも詳細で、「まとめ」ながら目もくらむようだ。
コメントを投稿するにはログインしてください。