Fitzgerald’s Clinical Neuroanatomy and Neuroscience, 7e

「神経科学」はスペクトルが広範で、進歩著しい。それをどう切り取って医学生が学習可能な教科書にするか、解剖学に限ってもいろいろな考えやアプローチがあって、教科書も多様だ

本書では、神経系の形態学と神経生理学とがまとまって記述され、関連する臨床のトピックがそれらの理解を補強している。もっとも、このような要素は他の教科書でも多かれ少なかれある。本書の特徴の一つは、入念に設計された立体的な模式図がたくさんあって、神経系の複雑な構造の理解を助けていることだ。

IMG_3262
脳幹の伝導路
視床下部の神経核
視床下部の神経核
IMG_3291
男性生殖器の自律神経支配

適所に、MRIやアンギオグラフィーの画像がある。それに対応して、解剖写真のほとんどは断面の写真だ。

IMG_3261
脳のアンギオグラフィー(X線、3DCT)
IMG_3258
脊髄と脊柱管の断面写真

各章の初めには発生学があり、構造の理解を助けている。

IMG_3256
脳の発生

臨床事項は囲み記事としてまとめられている。臨床に進んでからも役立つ知識だ。

IMG_3260
腰椎穿刺
IMG_3263
病的反射

他のElsevier社の教科書と同様、本書もStudent Consultに対応している。全文が読めるほか、追加の学習リソースが充実している。リソースには、ケーススタディー、本文の各章に対応するチュートリアル、MRIのアトラス、インタラクティブな練習問題がある。

スクリーンショット 2016-04-04 15.21.10
Student Consult上のケーススタディ
スクリーンショット 2016-04-04 15.24.11
各章のチュートリアル
スクリーンショット 2016-04-04 15.25.35
MRIのアトラス
練習問題
練習問題(単問)
スクリーンショット 2016-04-04 15.31.32
練習問題(連問)

前の第6版までの著者のフィッツジェラルド博士は2014年に亡くなり、3名の著者があとを引き継いだ。専門はそれぞれ、医療画像、臨床神経学、解剖学だ。著者の他に、相談役として専門家や学生が加わっている。今回それらのほとんども入れ替わった。

第6版と第7版との差は多くない。いくつかの図が変更され、詳細に過ぎる内容がいくつか省かれたようだが(*)、全体の構成や思想は従来を受け継いでいる。今の日本語版は第6版の翻訳だが、それを勉強してもよいだろう。

*変更点に関する記載がないので気づいた範囲だが、例えばベル=マジャンディの法則に例外があるとの記載が省かれ、初期のfMRIの機器の写真が削除された。

IMG_3254
巻頭はフィッツジェラルド博士への追悼文
IMG_3289
第6版日本語版のフィッツジェラルド博士による序文。本書の思想は第7版でも継承されている。