Nolte’s The Human Brain, 7e / The Human Brain in Photographs and Diagrams, 4e

神経科学の教科書。前版までの著者John Nolte氏のあとを2名の著者が引き継いだ。

神経解剖学が根幹にあり、神経の細胞生物学、神経発生学に続いて、中枢神経系各部の各論が述べられる。神経科学の歴史的経緯が紹介され、現代までの多様な手法による成果が豊富に引用される。学際的に楽しく学べる。

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神経管の背腹軸を決める因子の発現パターンを蛍光抗体法で可視化。原論文では、背側からPax7、Pax6、Oligo2、Nkx2.2、Foxa2(Le Dréau, G. and Martí, E. 2012. Dev Neurobiol 72, 1471–1481
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軸索絞輪部の透過電子顕微鏡(TEM)写真。TEMでここに行き当たるのはかなりのトライを要す
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有毛細胞にのる耳石の走査電子顕微鏡写真
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肉眼解剖による放線冠と拡散テンソル画像で可視化された放線冠との対比
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光干渉断層法による網膜、隅角の断層像

 

神経解剖学の本ではしばしば古典的な議論がそのまま継承されていることがある。しかし本書はきちんとそれらを解消していて安心できる。

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皮質脊髄路の説明は、まず古典的な議論の全否定から
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外眼筋の作用は作用の軸と結合組織の関与を含めて議論

 

電気生理学に関しては基本的な説明だけなので、必要なら『ガイトン生理学』など他書を当たることになると思われる。臨床で必要になる事柄も記載されているけれども、神経科学を臨床に結びつけること自体は本書の主眼ではない。『Neuroanatomy through Clinical Cases』などを当たろう。

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脳の血管支配。脳血管障害の臨床では必須の知識の一つ

 

702ページ、厚さ3cmのボリュームは、学部生の神経解剖学の授業*で通し読むにはoverkillかもしれない。神経科学が好きなひと、ビジュアル好きなひと†は楽しめるだろう。前版では1年後に簡略版『Essentials of the Human Brain, 1e』がでたが、今回はないようだ。

* 本学では講義・実習・試験で正味8日間
† 視覚を主とする学習方法を好む人

Student Consultに対応しており、全文の他、ムービーや練習問題にアクセスできる。

  • 全文
  • 脳の3Dムービー × 24
  • 確認問題(5択)× 111(各章5〜7)
スクリーンショット 2015-08-14 15.29.26
脳幹の3Dムービーのキャプチャ

 

Nolte先生にはアトラスもある。

脳の連続切片、伝導路のダイアグラム、少しの解説が特徴だ。見開き完結、スパイラルバウンドなので、参照に使いやすいだろう。学部の授業では必要に及ばないと思われるが。

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連続切片の1枚が見開きに
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伝導路のダイアグラムを切片、外観にスーパーインポーズしてある。これも見開き