ウィーター 図説で学ぶ機能組織学 原著第6版

2013年刊の『Wheater’s Functional Histology: A Text and Colour Atlas, 6e』の日本語版。日本語版の前版『機能を中心とした図説組織学』から、書名と出版元が変わった。原著から5年遅れているが、内容は基本的なのでまだ大丈夫だろう。

本書の特徴は、非常に高品位な顕微鏡写真が充実していることだ。読んで勉強する教科書と言うより、解説多めのアトラス。大部分がHE染色で、並の標本では判別できないような構造や細胞まで同定できる。組織学実習で、探しているものがみつからず困ることが多いなら、本書をみてみよう。使われている写真のほとんどは、筆者らの撮り下ろし。

本書には、日本語版と英語原著の両方の電子書籍が付属している。iPadを持っていたら、電子版も使ってみよう。組織学実習で顕微鏡の傍らでみるには、iPadのほうがいい。

序文:「この図説アトラス」と筆者らのいうとおり、本書はアトラス

日英両方の電子書籍付き

「皮膚」の章をみてみよう。章の初めには簡潔な要約がある。

章の初めの要約

図の大部分が光学顕微鏡写真で、その多くがHE染色。特殊染色も使われるが、HE染色と対比されている。HE染色の読み取りに役立つだろう。HE染色標本自体も大変出来がよく、普通は同定できないような構造や細胞もみてとれる。

光学顕微鏡写真からのダメ押しで電子顕微鏡写真もある。光学顕微鏡写真もだが、いいショットを得るまでの苦労が忍ばれる、美しい写真だ。

章末には、簡単なまとめの表がある。

模式図と光学顕微鏡写真

電子顕微鏡写真

ランゲルハンス細胞:HEと特殊染色で示される

メルケル細胞:HE、特殊染色、電子顕微鏡で同定される

毛根・毛包:深さによる構造の違いがよくわかる写真は、他書ではあまり見当たらない。

まとめの表

模式図が少しだけある。もう少し多くてもいいとは思う。例えば、免疫系の脾臓。写真の品質はすばらしいが、脾臓の構造を理解するには模式図が足らない。

脾臓:写真は素晴らしい

脾臓の模式図:単純すぎて写真と対比できないし、濾胞と脾洞のスケールが合ってないし、脾洞内皮の描写も変。理解の足しになっているとはいいがたい。

細胞生物学、生理学、病理学まで踏み込んだ解説は少ない。原著タイトルの「Functional Histology」は、初版当時ならともかく、現代の他のテキストと比較すると今はレジェンドでしかない。また、原著を作ったのは英国の著者なせいか、『Ross組織学』や『組織細胞生物学(原書第3版)』のような米国のテキストと比べると解説の構造に若干の差違がある。例えば、米国のテキストでは皮膚を「厚い皮膚」と「薄い皮膚」に分類するが、本書ではその代わりに皮膚の多様性が示される。また、胸腺でのT細胞成熟の解説も簡単だ。論理的に違いがあるとまではいかないが、遠近感は異なる。授業のプリントや指定教科書と違っていたら注意しよう。

皮膚の多様性