本当にあった医学論文

 

テレビ朝日系列「芸能人格付けチェック」の「高級ワインや高級食材の食べ比べ」で、3択問題の「絶対アカン」選択肢を選んで画面から消えてしまったり、一方でGACKTが65連勝していたりして、実際どれほど難しいものなのだろう?

 

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各巻の帯が興味深い

 

『本当にあった医学論文』は、珍しいテーマの医学論文を集めたシリーズ。その第3巻にそんな論文が紹介されている。

「ネタを冷凍しても寿司の味は落ちない」

Iwata K, Fukuchi T, Yoshimura K. 2015. Is the Quality of Sushi Ruined by Freezing Raw Fish and Squid? A Randomized Double-Blind Trial With Sensory Evaluation Using Discrimination Testing. Clin Infect Dis 60:e43–e48. https://dx.doi.org/10.1093/cid/civ057
医学生を対象にしたランダム化二重盲検試験による検証だ。ネタは鯖とイカ。40人の被験者で合わせて480かんを実食した。用意された寿司はつぎのようなもの(DeepLで翻訳)

寿司ネタとしては、アニサキスの生息が確認されているサバとイカを選びました。実験の1週間前に、大阪府内の市場でサバとイカを購入し、40℃の冷凍庫で凍らせました。実験の2日前には、同じ市場でサバとイカを購入し、通常の冷蔵庫で保存しました。冷凍した魚は、実験前日の夜に冷蔵庫に移し、そこで一晩かけて解凍した。サバは和歌山県で獲れたマサバを選んだ。イカは、鳥取県で捕獲されたケンサキイカを選択しました。冷凍素材と未冷凍素材では、魚種と漁場を同一にした。実験当日の朝、2人の寿司職人がサバとイカを寿司サイズにカット。また、寿司飯(商品名「コシヒカリ」、石川県産)を炊き、実験ではすべての寿司に同じ飯を使用した。

結果は、統計的に有意差ナシ。
筆頭著者は神戸大学の感染症専門家の岩田健太郎氏(イワケン)。格付けチェックではなく、アニサキス症予防のネタの冷凍処理を促すための研究だ。

ネタを冷凍しても寿司の味は落ちない

 

『本当にあった医学論文』の第1巻にはこういう医学論文が合わせて79本、第2巻では75本、第3巻では67本紹介されている。科学的妥当性よりは物珍しさが重視されていて、症例報告や怪しげな研究も少なくないが、岩田氏の論文のようにハードコアな研究もある。研究のネタをみつけるアタマが柔らかくなりそうだ。

例えば、勤務医のブラックな勤務体制が話題になって、医療の安全性まで心配されている。

実際はどうなのだろう? 同じく第3巻には、New England Journal of Medicine(NEJM)に掲載された「夜勤明けに手術をしても大丈夫」という論文が紹介されている。NEJMは、インパクトファクターが74.7超で世界医学雑誌ランキング総合医学部門で第一位(2020年)の医学専門誌だ。夜勤明けとそうでない場合とを比較して、病院のタイプごと、執刀医の年代ごと、アウトカム毎に比較して、差が無かったという。

Govindarajan A, Urbach DR, Kumar M, Li Q, Murray BJ, Juurlink D, Kennedy E, Gagliardi A, Sutradhar R, Baxter NN. 2015. Outcomes of Daytime Procedures Performed by Attending Surgeons after Night Work. New Engl J Medicine 373:845–853. https://dx.doi.org/10.1056/nejmsa1415994

日米の医療体制には違いがある。日本の場合でも検証があるとよさそうではある。

 

夜勤明けに手術をしても大丈夫

 

本書の著者は呼吸器内科医(ブログ)。ちゃんとした論文紹介の連載ももっている。