Whole Earth Epilog, October 1974

ノーブランド品
¥59,700 (2026/04/13 12:53時点 | Amazon調べ)

Whole Earth Catalogの1974年の休刊の最終号である。50年前の本で、古書で状態の良いのは稀有だが、ネット上で全巻を読むことができる

Whole Earth Catalogは、1968年、米国の作家・編集者のスチュアート・ブランドによって創刊された。米国の思想家バックミンスター・フラーの「最小のもので最大を成す doing more with less」という思想にインスパイアされたという。年2回の定期刊行物だった。

サブタイトルの「access to tools」は、「人はどこでもツールを使える」「自分自身の環境を設計できる」という理念を表している。Whole Earth Catalogは当時のヒッピー・ムーブメントに大きな影響を与え、よく読まれた。ヒッピーたちの「イケてる」商品のカタログで、販売元から実際に購入することもできた。

しかしやがてヒッピー・ムーブメントは下火になり、1974年10月をもって定期刊行物としては休刊になった。この時のタイトルは、『Whole Earth Epilog』になっている。欠けた地球の写真も、創刊号のNASAの「青い地球」の写真を踏まえている。その後も不定期に刊行は続いて、1998年の30周年記念号が最後になった。

内容が彼らの思想と暮らしの全般をカバーしていたことが、この最終号の目次を見てもわかる。ノマド、リモートワーク、移住といった現代日本のムーブメントにも通じるかもしれない。

表紙
使い方
もくじ

この号の巻頭には、人類学者グレゴリー・ベイトソンの『精神の生態学へ』(1972年)が紹介されている。人間の思考・社会・自然を「相互に結びついたシステム」として理解する必要があると提唱したもの。日本語訳が岩波文庫の3巻になっていて、Kindleでも読める。

著:グレゴリー ベイトソン, 翻訳:佐藤 良明
¥1,155 (2026/03/03 15:26時点 | Amazon調べ)
グレゴリー・ベイトソンの『精神の生態学へ』

そして、ヒトへの見方を変革する書として、解剖学書もある。しかも、日本の著者による、日本の出版社の本だ。すなわち横地千仭『Photographic Anatomy of the Human Body』である。

エルぜビア社は自国のオランダ語ではなく英語で出版している—医学書院の創始者は、これに触発されて英文書の出版事業を始めた。その初期の出版がこれである。1969年に和書を英訳して刊行した(第3版は医学書院でまだ入手可能のようだ)。のちに1983年の『解剖学カラーアトラス / Photographic Atlas of Anatomy』に継承され、現在も世界中の医学生たちが使っている。

医学書院
¥13,200 (2026/02/17 23:11時点 | Amazon調べ)
Photographic Anatomy of the Human Body

ロゴや見出しに使われているフォントは、Windsorという。これを使うだけでヒッピーな印象になる。ヒッピームーブメントは日本にも直接・間接に多大な影響を与えた。いまの群馬界隈でいえば、チャイハネとか、さくげつとか、野路(のじ)とかそうなのかも。

パーソナルコンピューターもデスクトップパブリッシングもなかった時代なので、紙焼きをハサミと糊でレイアウトして製作された。その様子がIndexのページに嵌め込まれている。

  1. 写真を印画紙で出力
  2. 写植(写植機で組んだ文字)を紙に焼き付ける
  3. それを ハサミで切る
  4. レイアウト台紙に ノリで貼る(ペーストアップ)
  5. 版下をそのまま印刷所へ
ハサミと糊で制作された
Stewart Brand published the final issue of the “Whole Earth Catalog” in 1971. Upon the title’s fiftieth anniversary, he reports feeling little nostalgia for the project.Photograph by Richard Drew / AP – The New Yorkerより

巻末には、制作に関わった人達の集合写真がある。そしてなんと、収支報告もされている。後日、売上金2万ドルをどう使うか、ユニークなアイディアを読者に募った。それをゲットしたのが、燃やしてしまおうといったフレッド・ムーアだった。

ムーアはしかし燃やすことはせず、ゴードン・フレンチとともに「Homebrew Computer Club」というコンピュータの愛好家の集まりを作った。Whole Earth Catalogの理念をコンピュータサイエンスで継承したものでもあった。そこに参加していた2人の若者はのちに、コンピュータの会社を設立することになった。スティーブ・ウォズニアックスティーブ・ジョブズである。(なお共同設立者にはもう一人、アタリ社のロナルド・ウエインがいたが、設立12日後に職を辞した。)

製作者の集合写真と収支報告
ウォズニアックとジョブズ–Apple’s biggest fmoments (pictures) / CNET より(James Martin/CNET)

「Whole Earth Catalog」があらためて広く知られるようになったきっかけは、スティーブ・ジョブズによるスタンフォード大学の卒業祝辞である。その締めにこの「最終号」に言及し、裏表紙にあったフラーによるメッセージを「贈る言葉」として述べた。

cf: 映像の世紀 バタフライエフェクト「世界を変えた“愚か者”フラーとジョブズ」

そのすぐ後に古書で見つけたのがこの冊子である。まだ今ほどのプレミアはついていなかった。

裏表紙の写真とメッセージ

この写真の場所はRedditユーザにより特定されている

Stay hungry. Stay foolish.