神経と筋の解剖・評価コンパクトアトラス

宮武和馬. 2025. 神経と筋の解剖・評価コンパクトアトラス. 文光堂(東京)
神経と筋の解剖・評価コンパクトアトラス

神経と筋の解剖・評価コンパクトアトラス

宮武和馬
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目を引くカバーの本書は、東京科学大学御茶ノ水生協の第4回医学書ジャケ買いフェアで「素敵なジャケット賞」を受けた。

この不思議なイラストを描いたのは、東京芸術大学油画科の戸奈さくら氏。インスタなどで作品を発表されている。

ヒトの骨格を軸に神経や筋が配され、胸腔の左右に男女、脳には単眼、閉鎖孔には双眼がある。筆者の「解体新書を現代風にアレンジ」とのオーダーで描かれた。これまでになかった、あたらしい視点のテキスト、という筆者の自負が感じられる。

カバーに「レザック」が使われているようにみえ、クラシックな演出になっている。しかし実際に触れるとツルっとしている。実はコート紙にレザックに似せて印刷されたもの。

筆者は整形外科医で、難治性疼痛の診療に取り組んでいる。

本学の解剖学履修生はCTも学ぶので実感していると思うけれども、CTで神経はまず映らない。疼痛の評価をしようにも、医療画像の支援を受けにくいのである。となれば身体所見が重要になるけれど、そこでも疼痛自体を客観的には測れない。

そうして客観的な指標として筆者の思い至ったのが、筋力と筋の硬さを評価すること。これを疼痛の原因と疑わわれる神経について、その支配する筋に対して行う。まとめるとこんな感じだろうか:

神経に異常→痛む→主観なので測りにくい
     ↘
      筋力や筋の張りに異常→客観的評価

そして、こういう評価法の書いてあるテキストがないので、自分で作った。

序文[宮武和馬. 2025. 神経と筋の解剖・評価コンパクトアトラス. 文光堂(東京).]

全体が3つの章に分かれている。

第Ⅰ章が上肢、第2章が下肢。

各ページに筋がひとつずつある。骨格に頭蓋の筋を描いたイラストがまずあり、起始停止、走行をみてとれる。

つづいて、モデルを撮影した2つの写真。ひとつは、その筋の筋力、もうひとつは伸長性を徒手的に評価するための手技の説明。被検者の体位と力の入れ方、検者の力の入れ方が視覚的にわかる。

イラストと写真とを合わせてよくみて、自分や友人などを使って試してみたらよいだろう。

フットノートには、頭蓋の筋の起始・停止・支配神経、そしてときに手技の補則解説がある。

第3章は神経。デルマトーム、神経と支配筋との模式図、神経の走行のイラストなど、考えながら診療手技をするときの資料になっている。

A5版、103ページ、厚さ7ミリほどの、コンパクトな本で、手の中で気軽に扱える。

付録として、表面エコーの画像や動画へのリンクが付属している。ハイドロリリース(生理的食塩水の注射により筋膜や神経の癒着を緩める治療)でエコーが使われる。神経がどう映るか、動画でみておくとよいだろう。末梢では神経は動脈に伴走することが多い。動画で見れば動脈は拍動しているので容易にみつかる。その近くに神経がみつかる。

もちろん、くわしい局所解剖が検者の脳内に整っていることが必須だ。解剖学実習では筋膜を無闇に剥がしたり、細い神経を見失ったりしがちだけれど、ちゃんと意識して解剖しておきたい。

本書のカバーなどを撮影した写真について、本記事への使用の許諾を文光堂様よりいただきました(2025年12月26日)。転載・直リンクはご遠慮ください。