若葉マークの画像解剖学 第4版
画像解剖学のテキスト。主に診療放射線技師向け。
「若葉マークの」との枕詞は、全身にわたって総花的にいろいろなモダリティーについてカバーしてある、病気のことまではさわりだけだけど、ということだろう。そして病院勤めになれば、CTならまかせとけの○○さん、MRIで所見だすなら□□さん、というように「専門化」され「若葉マーク」がはずれていくのだろう。正常画像が主だけれども、一部異常画像も対比される。
画像解剖学のテキストのポイントは、なんといっても画像の質だ。歴史のあるテキストでも画像が古くてぼんやりしていたら興ざめである。その点は本書は大丈夫。

頭頚部のX線画像と部位の同定

肝胆膵エコー

胸部CTの連続スライス画像

頭部CTとMRIの対比と部位の同定

腹腔動脈のデジタル・サブトラクション・アンジオグラフィー

尿路造影

唾液腺シンチ

軟部組織のエコー
各章の冒頭には、概説がある。
まず解剖学の概説。模式図によって各部位の概念を抑えられるようになっている。さらに実務のために、どういうときにどういう画像が必要とされるのか、どういう条件で撮影されるのかのまとめがある。
「臨床ワンポイント」は、医師からオーダーがあったときに、どういう画像が求められていて、どう撮影するのがよいかなどのまとめになっている。パラメーターの多彩なMR撮影では肝腎なことだ。「Check!」は、さらに若葉マークを外せるようなポイント。
「Check!」で興味深かったひとつは、T1強調では下垂体後葉が白く映ること。ADHによるものらしく、尿崩症で輝度が低下する(高齢者では正常でも低下することがある)。尿崩症の診断の参考所見のひとつになっている。

MR撮影で臨床の必要にどう応えるか、のまとめ

ワンポイント!

使われる使われないの目安もわかる
医学科の解剖学ではあまり使われない用語も少し出てくる。たとえば、腹部のイントロにある、「腹膜内器官」「半腹膜内器官」。
空腸・回腸など、大部分が臓側腹膜に覆われるのが「腹膜内器官」で、肝臓・盲腸など半分くらいなのが「半腹膜内器官」といわれる。しかし『グレイ解剖学』ほか、医学科で使われるテキストにはみられない。原理からいうと、腹膜に囲まれた中にあるのは腹水であって、腹腔内臓器は全部「腹膜外」だから。肝臓・膵臓・上行結腸・下行結腸などが腹壁にくっついてるのは二次的だし。
附図にイラ解のを改変したのが使われているが、もとの図もちょっと変な図なので、改変でまた変になっている。
紙面の写真は、メジカルビュー社の許諾を得て(2025年12月15日)、本記事に掲載されています。転載、再利用は厳にお控えください。
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