WEEK5 Day2 胸壁・肺・縦隔
木曜日は終日実習。胸壁を調べ、胸腔を開けて、胸膜腔を学ぶ。CTもみる。
1人しか作業できない局面が増えるので、適宜分担し、見せ合って、効率的に進める。
実習書に書いてある通りに進めよう‼
『グラント解剖学実習』は綿密に計画され推敲されている(誤植は別として)。テキトーにやって迷子になるよりも、正直になぞっていったほうが早くできる。
胸部では例えば、胸壁を開けるときの肋骨弓に沿った切開線の位置。胸膜腔よりも少しだけ中側が開くようになっている。上過ぎると視野が狭まる。下過ぎると腹腔が開いたり、肝臓を切ったりする。
CTチェックリスト
- 実習中に死亡診断書と死亡時画像検査結果通知書(禁帯出)を確認し、iPad上で画像をみてチェックリストを完成させ、提出する
- スキャン後すぐに返却するので、それをみてCT課題に向けて解剖を進める
CT課題に備えて
- 胸壁を開けてしまうと以後分からなくなるのが、気胸と胸水
- CTでみて胸水があれば、胸壁を開くときに胸水をもらさないようにしよう。およその量(重さで)や性状を記録する。シリンジで膿盆に回収し、計量する。膿盆のドライウエイトをあらかじめ量っておくとよい
- 心胸郭比を計測して心肥大がないか(<50%)を実地にみる
CT課題ではなにをする?
CTで見えたものを解剖体と比べる。CTとスケッチを対応づける。
- 死亡時画像検査結果通知書を参考に自分でもCTをみて、気づいたところをまとめる
- 実際に解剖体をみて、CTと突き合わせる
- 読影した放射線科医が参考になるようなレポートにまとめる
解剖学の授業なので、死因を探せといっているのではない。目立った病変がなくても形態を丁寧に比べればよい。たとえば、肺内の気管支がCTではこうみえたけれども、実際に剖出したらこうだった、など。
胸壁
- ブリーフィングのときに確認しておく
- 胸骨角
- テキストで胸骨角レベルにある構造を復習:第2肋軟骨、大動脈弓、気管分岐部、肺動脈分岐部、第4・5胸椎間
- 手袋を付ける前に、自分の胸骨角を触知し、第2肋骨をみつける。
- 第5肋間鎖骨中線
- 自分の心尖拍動を確認する
- 解剖体で肋骨を数え、鎖骨中線、前・中・後腋窩線を確認する
- 胸骨角
- 肋間の層構造
- 肋間筋の向き、分布範囲
- 肋間神経・動静脈がどの層に通るか、上下方向の分布
- 肋間に鈍的にプローブを通してみよう
- 怪我に注意! 肋骨の断面が鋭い。布で胸壁の断面を養生する
- 前胸壁を外すとき、内胸動脈のことを忘れない
使用する解剖器具
- 肋骨は肋骨剪刀や骨剪刀で。ふつうのハサミでも切れるかもしれない
- 鎖骨はノコギリやキャストカッターで。硬いので剪刀ではムリ
キャストカッター
鎖骨の切断にはキャストカッターを使ってもよい。ただし、注意がいろいろある
- 刃は振動しているので硬いものが切れる。軟らかいものは切れにくいが、切れないわけではない
- フェイスシールドで眼を保護する
- 電源スイッチがオフになっているのを確認してから、プラグを差す
- 刃を切るものに近づけ、刃を当てる前にスイッチをオン(1)
- 切り終わったら刃を離して、スイッチをオフ(0)
- 刃が完全に止まってから(慣性でしばらく動いている)、キャストカッターを置く
- 本体を濡らさない(防水ではない)。濡れると壊れるし、感電するかもしれない
- 使い終わったら刃を清拭して、すぐに返す
- 台数が限られるので、順番待ちするより板状鋸で切った方が早いかもしれない
胸腔・胸膜腔
- 壁側胸膜が破れているはず。外した前胸壁とみくらべて、もとの形を想像する
- 胸膜洞や胸膜頂まで、胸膜腔全体に手を差し込んで、広がりを確認する
- 肺、心臓、縦隔の位置関係を原位置で確認する。前胸壁とも対応づける。位置の目安を教科書の図もみながら確認する
- 内胸動脈は、鎖骨下動脈〜内胸動脈〜上腹壁動脈〜下腹壁動脈〜外腸骨動脈と、体幹を縦につなげる。覚えておいて、腹壁の解剖の時につなげよう。
- 肺の大きさや性状をみる
肺門・肺間膜・肺根、肺の取り出し
- 肺を取り出す前に、肺門部と肺間膜をよくみておく(切ってしまったらもうみられない)
- 肺根の周りの胸膜を剥がし、肺動脈・肺静脈・主気管支をひとつずつ同定し、位置関係をみておく
- 一番前にあるのは? 上にあるのは? 左右の違いは?
- みたらひとつずつハサミで切る
- 黒い塊はたぶんリンパ節
- 肺炎がありそうなら、気管支内異物がないかチェック
- 上大静脈、交感神経幹と接するのは肺のどこ?
- 肺動脈・肺静脈は、切ってしまうと同定困難なので、切る前に同定してください。壁の厚さは同じです。気管支1、肺動脈1、肺静脈2のところで切る
区域気管支の剖出
- 肺門からピンセットで少しずつ肺実質をむしり取り、主気管支、葉気管支、区域気管支と剖出する
- 区域気管支まででやめること。末梢までむしると気管支が動いて同定できなくなる
- ポンプで気管支に空気を送れば区域を同定できる
- 腫瘍のある肺なら、気管支の剖出はせずにスライスしてみる
- 班で肺担当(左右各1)・縦隔担当(2)と手分けして効率的に
心膜・心膜横洞・心膜斜洞・心臓の取り出し
- 心臓を取り出す前に、心膜と心膜腔をよくみておく(切ってしまったらもうみられない)
- 心膜横洞・心膜斜洞に指を通してみる。そもそも何?
- 大血管を1本ずつ同定して、ひとつずつハサミで切る。心房や心嚢まで切らないように
FAQ
- 胸膜腔にあるゼリー状のものは、胸水が凝固したもの。
来週のイベント
- 冠動脈のスケッチとチェック
- 胸部エコー
進捗
- 11時から30分ほど、各班の肺をみてまわるツアー。リーダーとサブリーダーが交代で説明要員になる。
- 完全逆位、胸部大動脈解離による血胸、多量胸水など
- 11:30から昼休憩へ
- 13時集合
チェック
今日やったところを見せながら、ざっと説明してください。神経、その通り道のいろいろ、区域気管支、心膜のいろいろ、胸膜のいろいろ、ぜんたいにいろいろ、区域気管支は番号で
気管支、肺動脈・静脈を変なところで切ってしまった? 一つ一つ同定しながら先に進むことを習慣づけてください。失敗が蓄積すると、なにがなんだか全体にわからないまま終わってしまいます。
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