医学をめぐる漢字の不思議

医学をめぐる漢字の不思議 (あじあブックス081)

医学をめぐる漢字の不思議 (あじあブックス081)

西嶋佑太郎
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医学用語の考え方, 使い方 – その医学用語の使い方、エビデンスありますか?』に続く、医学用語の解読の本。もとはいずれも、大修館書店のサイト「漢字文化資料館」での連載「医学をめぐる漢字の不思議」。2022年6月と8月に相次いで書籍化された。大修館書店は、『ジーニアス英和辞典』で受験生時代にお世話になった医学生は多いはずだ。

医学関係の日本語文を書いたり、編集したりする人なら、この2冊は本棚に揃えておきたい。

本書は3つの章に分かれている。第1〜2章は、加筆+書き下ろし、第3章は連載に加筆したもの。

  1. 医学用語の歴史
  2. 医学用語の制定に関わった医学者らの物語
  3. 議論の多い医学用語の漢字の各論

本書と前著との各論で取り上げられた漢字を目次からまとめておこう。

 

医学用語の考え方,使い方 医学をめぐる漢字の不思議
1.「脊」は手書きでどう書くか
2.「頸部」と「頚部」はどちらが正しいのか
一、膵臓を表す文字の候補
二、「腺」を表す文字の候補
3.「鼠蹊」と「鼠径」と「鼡径」 十、「鼠径」部のなりたち
4.「癌」と「がん」を使い分けるべきか 五、「癌」の不思議
六、「癌」と「がん」は違う?
5.「膣」「腟」はどちらが正しいか 三、「腟」「膣」はどのように使われ始めたか
四、「腟」「膣」はどちらが「正しい」のか
6.「掻痒」か「搔痒」か「瘙痒」か
7.「腔」を「クウ」と読むのは間違いなのか 七、ゆれる「腔」の読み
8.「頭蓋」は「ズガイ」か「トウガイ」か
9.「肉芽」を「ニクゲ」と読むのは誤りか 八、「肉芽」を「ニクゲ」と読むのはなぜか
10.「楔入圧」はなんと読むか 九、正解が定まらない「楔」
11.喘鳴は「ゼンメイ」か「ゼイメイ」か
12.「熱発」は間違いか
13.「抗菌薬」か「抗生物質」か.「抗─生物質」か「抗生─物質」か
14.「理学所見」か「身体所見」か
15.「御侍史」と「御机下」のこと
十一、三つ子、四つ子などの別名
十二、「橈骨」の「橈」とは何か
十三、ペストの謎

 

医学用語の考え方, 使い方』同様、詳細な文献調査に裏付けられた解説が、本書の見どころだ。参考文献のリストも整備されている。生物系・医学系のようにPubMedやGoogle Scholar では済ませられないから、労作なのがわかる。

 

文献調査に裏付けられている

 

参考文献

 

現代の医学用語に至るまでの先人たちの苦労も興味深い。日本解剖学会の解剖学用語の委員会の話も出てくる。評者はそのお一人から授業で線や腺のことを聞いたことがあったので、裏付けになった。

 

医学用語が定まるまでのいろいろ

 

各論は、おさえておきたい。橈骨の橈の話は、曲がっているから橈との俗説は知らなかったけれども、漢和辞典で調べて不撓不屈の撓とはちょっと違うんだな、とは思ったりしていた。

  1. 橈骨の橈って、どういう意味?
  2. 漢和辞典を引いて「たわむ」をみつけ、そういえば橈骨は曲がっているなと思う(cf. いまみたら確かに「櫂」も載っていた)
  3. 後日、くるまを運転しているときに、専門学校の窓に「不撓不屈」を一瞬みかけて、あれ?同じ字だったかな?オチに使えるなと思いつく
  4. あとで辞書を調べて、撓なのを知って、ちょっとがっかり
  5. ワンステップ入れてオチにつなげる

 

橈骨の橈は櫂の意味だったが、実は原語ではスポーク

 

おっとぉ…

 

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