遺伝研のさくら 第6版
群馬県南部では先週末から河津桜が見頃だ。新学期が近くなれば本学キャンパス内の染井吉野も開花するだろう。
サクラは、バラ科サクラ属の花木である。日本には自生種が10種あり、種間交雑や育種でできたのが数百種あるとされる。
国立遺伝学研究所のキャンパス(静岡県三島市)には、そうしたサクラが220種ほどあり、苗木の継代が続けられている。もともとは、竹中要博士が染井吉野の起源を探るために収集したコレクションである。今年の4月8日(土)には4年ぶりの一般公開でみることができる。
『遺伝研のさくら』はそのカタログである。公益財団法人 遺伝学普及会が頒布している。2023年2月に改訂された第6版は、頒価1,800円(送料200円)で、A5版 247ページ。Amazon、楽天、一般書店では売られていない。ISBNも付いていない。
iOS/Androidのアプリ「さくら図鑑」(1,800円)もある。
本学医学科では2年生のときに遺伝学の授業がある。植物の一般は習わなかったかもしれないが、サクラに関するイラスト入りの用語集があるので心配ない。
コレクションのきっかけになった染井吉野をみてみよう。
和名、学名、親の種、入手先、形質、解説文、花の写真が掲載されている。
表現型解析と遺伝子解析により、染井吉野はエドヒガンとオオシマザクラの交雑でできた単一の個体を起源とすることが分かっているが、原木は知られていない。日本のサクラの8割ほどがこれで、接ぎ木や挿し木で増やされたクローンである。サクラは自家受粉で結実することはまれなので、染井吉野のクローンの林では実をみかけることはほぼない。
本学の近くのサクラの名所では赤城千本桜が知られ、開花時期にはとても混雑する。学内始め、市内・県内のいろいろなところでも染井吉野はみられるだろう。
染井吉野などの日本のサクラが、20世紀初頭にアメリカに伝えられて広まった。ワシントンのサクラが知られ、開花期には全米桜祭りが催される。染井吉野の実生から育成された品種は、遺伝研では「アメリカ」と命名されている。
群馬県南部で先週末から開花しているのが河津桜。早咲きのサクラで、原木が静岡県河津町の民家にあり、全国に広まった。群馬県内では、伊勢崎市みらい公園(いせさき市民のもり公園)が美しい。
春休みに桜狩りをしてみよう。
コメントを投稿するにはログインしてください。