Apple Watch は医療系で役立つか

 

Apple Watchは自分自身の健康管理に役立つ。では、医学系・医療系の勉強や仕事にはどうだろうか。

 

電池は十分か

当直や長時間の勤務では、端末を充電しないでやりすごしたい。Apple Watch Series 9は最大18時間(低電力モードで36時間)。1日ちょっとは使える。Ultraは最大36時間(低電力モードで72時間)だから、充電せずに2日以上使える。2日間にわたる国試でも充電しないで済むかもしれない。ただし試験中は使えない(後述)。

 

アルコール消毒する

Appleによると、アルコール系消毒液で清拭するのは大丈夫(布製・革製のバンドを除く)。エタノールに浸漬するのはダメ。流水で洗うのはOK。

石けん・洗剤・漂白剤(次亜塩素酸)・超音波洗浄・加熱はダメ。

アルコール清拭のしやすさからは、平滑で継ぎ目のない、ソロループがいいだろう。

手指用消毒液はグリセリンなどの保湿剤が入っていて拭き染みが残るので、表面消毒用を使おう。

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手袋をしたままで文字盤をみる

医療用の手袋を時計に被せるように装着しても、画面が光るので文字盤が透けてみえる。文字や時針の大きな文字盤を選べば、時刻を読み取りやすい。Ultraの文字盤は他より明るく大きいので、有利だ。

ラベンダーニトリル越しに文字盤をみる

 

脈拍を測る

脈拍を測るなら、パルスオキシメーターを使った方が早い。それがない場合、秒針が30秒なり1分なり進むのをみながら脈を数える。

画面にタップしてから消えるまでの時間が、デフォルトでは15秒なので、70秒に変更する。ただし、この設定でも、手くびを持ち上げて画面がオンになってから消えるまでの時間は、5秒のまま変わらない。タップでオンにすること。

 

スリープ解除時間を70秒に設定(iPhoneのWatchアプリ)

 

点滴速度を調整する

病棟で正確な調整が要るならポンプで。滴下速度で合わせるなら、専用のアプリがいくつかある。Apple Watchを手くびの屈側に向けて着けると、点滴を操作しながら画面を見やすい。

 

滴下のタイミングを合わせるアプリ、点滴ヘルパー(無料)

 

計算する

計算機アプリで四則演算ができる。投与量など、計算するには十分。

 

計算機

 

試験監督に使う

試験監督では秒単位で正確な時刻が必要だ。これはGPSに対応しているので心配ない。

監督中に、アラームやアラートが鳴ると大問題だ。これは、試験用の集中モードを作って、どんな状況でも何も鳴らないように設定できる。iPhoneで設定して、他の端末とも同期させる。

 

iPhoneの設定アプリ

 

医師国家試験の試験中は使えない

置き時計も許可されない。ふつうの腕時計が必要。

厚労省の文書から抜粋:

腕時計(電卓、通信又はメモ等の機能がある時計の使用は認めない。)

試験中に机上に置くことができるのは、筆記用具(HB の鉛筆、プラスチック消しゴム)、定規(三角定規、分度器機能付きのものを除く。)、受験票及び特別に許可された物のみとする。

タイマーやアラームを使う

実験や検査、カップ麺の計時などで、手元でタイマーが使えると便利だ。当直時の起床時刻や交代の時刻など、アラームをセットしたいことも多い。Siriで設定できるので、手が空いてないとき、衛生上画面に触れられないときにでも使える。

タイマーで計れるのはいちどに一件だけだが、アラームは複数設定できる。「3分のタイマー」「30分後にアラーム」などといえばよい。

 

メモは取れない(替わりにボイスメモ)

人の名前とか、バイタルの数値とか、メモしたいことは多い。Siriでメモを取ろうとすると、「Apple Watchではメモのお手伝いをすることはできません」となる。メモアプリがApple Watchに対応していないからだ。

Evernoteなどサードパーティーのアプリを使うか、ボイスメモアプリで録音することはできる。

 

対光反射には使えない

画面を一時的に明るい白色にして、ライトの代わりにできる。Apple Watch Ultraなら、アクションボタンにライトを割り当てられる。夜間の捜し物には使える。

意識のある患者の目の前に腕時計を向けるわけにはいかない。意識がなくても、確実性からいうと光量が足らない。

 

勉強に使う

本学で解剖英単語に利用しているQuizletは、Apple Watchに対応していない。替わりになりそうなのはある。

 

プレゼンに使う

Keynoteで制作したプレゼンなら、iPhone / iPad / Mac 上のプレゼンをApple Watchで操作できる。

 

調べ物をする

Siriのカバー範囲ならある程度。専門的なことはスマホ、タブレットなどの方がいい。

  • 今日は何日? →表示され、読み上げられる
  • 今日の予定は? →カレンダーが表示されるが、読み上げてはくれない
  • 平成20年は何年? →2008年1月1日火曜日(元日)でした、と表示され読み上げられる
  • 2008年を元号でいうと? →2008年を何に換算しますか?といって、らちがあかない
  • 気管支を英語でいうと? →それっぽい英語が表示され、発音される
  • 前立腺を英語でいうと? →英語が表示されるが、発音はされない
  • 大前庭腺を英語でいうと? →「大前提川」と認識されてしまう
  • 胸鎖乳突筋の支配神経は? →該当するウエブページがでる
  • 心臓の痛覚の脊髄レベルは? →該当するウエブページがでる
  • 黄色ブドウ球菌感染症の第1選択薬は? →該当するウエブページがでる
  • オミクロン株の感染でよくみられる症状は? →該当するウエブページがでる

なお、試験中に何かぼそぼそ言っていると、不正行為になる。

 

連絡する

メール、メッセージ、LINEが使える。GPSモデルは近くにiPhoneがあれば、GPS+CellularモデルはiPhoneがなくても電話できる。Instagramは通知だけ。

 

駐車した場所に戻る

授業やカンファレンスに遅刻しそうであわてて駐車すると、あとで駐車場所がわからなくなることがある。コンパスアプリや地図アプリで戻れる。

 

駐車場所への道案内

 

自分の体調の変化を知る

医療系の就学や就業には、自分の体調変化のモニターは欠かせない。

Apple Watch Series 6以降には血中酸素飽和度のセンサーがある。専用のパルスオキシメーターと同程度の精度があり、継続的にモニターできることから、呼吸器系の変化に気づける可能性がある。

体温のモニターには、ちゃんとした体温計の方がよい。Series 8以降には温度センサーもあり、睡眠中の手首の表面温度をモニターしている。月経周期の予測が主な用途だが、計測自体は性別にかかわらず可能。みられるのは睡眠中の手首温の平均値の変化だけだが、機能があるなら使っておこう。

 

血中酸素飽和度

 

手首皮膚温はiPhoneでみられる